第6話

 「ねえ、あなたは男子とは普通に話せるんでしょ?渡会君とよく話してるものね」

 今度は彼女が聞いてきた。

「まあ、そうだね。俊之は幼馴染だから当然だけど、他の男子とも普通の会話ならこなせるよ」

「はあ、ちょっと羨ましいわね。私なんかほとんどの人に緊張しちゃって無表情になっちゃうんだもの。入学直後なんてなぜか男子も女子もみんな話しかけてくるから毎日緊張しっぱなしだったわ。まあ今度は逆に誰も話しかけてこなくなって、いつの間にかぼっちになってたんだけどね......」

 その容姿じゃそりゃあ注目されるでしょうよ。中身は残念な人だけど。

「せめて女子とは仲良くなっておけばよかったと今でも後悔してるわ。自分から話しかけられないのに向こうから来てくれたのよ!なんでそんなチャンスを逃しちゃうかなあ、もう。最近女子からはなんか避けられてる気がするし」

 それはそうだろう。仲良くなろうと近づいたら無表情で無視されてしまうのだ。いくらきれいでもそんな奴には俺も近づきたくないし、女子からすれば嫌な奴という風に思われても仕方ない。

 それにしても彼女、上野朱里はいつもの印象とは打って変わってとても感情表現が豊かな女の子のようだ。これが彼女の素なのだろうか。どうもまだ混乱している。

「上野さんってこうして話している所を見ると普通の女子みたいだね。」

「ちょっと、それどういう意味よ。私は普通の女の子よ。どっからどう見てもね」

 普通じゃないですめっちゃ可愛いですハイ。

「自分でコミュ障とか言っといてそれはないでしょ。まあその割には滑舌もいいしよく喋ってるけど」

「当然よ。家に帰ったら自分の部屋で音楽流して熱唱したり、一人でカラオケに行ったりして鍛えてるから」

「ふ、ふ~ん」

 なんかこの人一人でも楽しそうだな。

「上野さん、実は一人でもわりと平気だったりしない?」

「......平気なんかじゃないわよ。カラオケだって一緒に行く人がいないから一人で行ってるんだもん。ああ~こんなはずじゃなかったのに、私の高校生活~」

 しょんぼりさせてしまった......。だが、そんな姿を見て思った。彼女はこんなにも感情表現が豊かでいじりがいがある。昨日感じたおもしろいものを見つけたという気持ちは多分これだったのだろう。もちろん率先していじるような勇気はないが。

「そうそう忘れてたわ。この食事会の目標を決めましょう」

「目標?」

 食事会に目標ってどういうことだ?疑問が顔に出ていたのか、すぐに彼女は答える。

「ええ、目標よ。というかもう決めたわ。私たちの目標はコミュ障脱却よ!いい?」

「え、あ、はい」

 目標がコミュ障脱却に決まりました。はい。

 そういえば最初にコミュ障どうし互いにWIN-WINとかなんとかいってたもんな。でもここまで話せててコミュ障といえるのか?よくわからなくなってきた。

「なによ、ノリが悪いわね」

「逆になんでそんなノリノリなんですかね......そろそろ予鈴もなるし、先に教室に戻るよ」

「ええ、また明日ね」

「ああ、また明日」

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