末期
奏曲と会えないまま、約1週間が過ぎて…
今日はクリスマスイヴ。
当然仕事は忙しく、それに没頭したまま今日が終わればいいと思ってたのに…
こんな日に限って早番。
煌びやかなイルミネーションに包まれた、カップルだらけのモール内を…
帰路に向けて通過するのも嫌になる。
この中に、奏曲とあの綺麗なコもいるのかな…って。
「っっ…!」
胸がえぐられるよう…
ねぇ、奏曲…
会いたいよ。
もう、嫌んなるくらい会いたいよ!
この1週間、それしかない。
たった1週間なのに、狂いそうだよ…!
涙目で、光溢れるクリスマスツリーを見上げると…
途端!
ケータイの着信バイブに、心臓がビクついた。
違うとわかってても、つい期待してしまって…
画面を見た瞬間。
鼓動が火花を散らしたように身体中をほとばしる。
すぐさま出たい気持ちと、終わりを迎えそうな恐怖に…
指が震える。
だけど逃したくなくて!
なんかもう半泣き状態で、応答ボタンをタップした。
「ダリア…?」
鼓膜に流れ込む、欲してた愛しい声音は…
切なげで優しくて。
胸が締め付けられて、涙が滲む…
「この前はごめん…
俺の事、…怖いか?」
「…っ、怖いっ?そんなワケっ…」
「俺はっ…!」
思ってもない問い掛けに、
慌てて返した否定を遮られ…
「俺は…
…会いてぇよ」
続いた言葉に…
心が、狂うほど震えた。
「っっ…!
じゃぁ、会いにきてよっ!」
「…っ!
ソッコー行く」
奏曲は既にモール近くにいるらしく…
すぐさま、混雑の少ない出入口で待ち合わせた。
「奏曲っ!」
会いたくて堪らなかった愛しすぎる姿を映して、駆け寄ると…
バイクのシートに軽く腰を落としてた奏曲は、立ち上がって…
グイっ!とその腕の中に引き込まれてすぐ、ぎゅっと強く抱き締められた。
「すっ…げぇ、会いたかった…」
耳元で囁かれた声に…
胸が潰れて、瞳は涙で溢れ返る。
「じゃあなんで連絡っ、くれなかったのっ…?」
「泣くなよっ…、ごめん…!
あん時オマエ、震えてたし…
怖がらせて、嫌われたかと思ってたんだよ」
「っ、嫌わないよっ!
絶対!嫌いになんかならないよっ!」
てゆっか、怖がってたんじゃなくて悶えてたんだし…!
「ん、でも…
嫌われてたとしても、会いたくてたまんなかった…」
そう言って更に、ぎゅっとする。
頭の中には、何で?がいっぱい暴れてるけど…
でも嬉しくて、嬉しくて!
会えた事も!
初めての、奏曲からの"会いたい"も!
もう嬉し過ぎて、何でもよくなる!
おかげで、涙が止まらないでいると…
「だから、泣くなって…!
今から花火連れてってやるから!」
毎年イヴには、飲み会をしてたビーチでクリスマス花火が催されてる。
だけどもうすぐ始まっちゃう…
「…っ、今からっ?間に合うの!?」
「誰だと思ってんだよ」
「〜〜っっ、奏曲さまっ!!」
あぁ!どーしようっ…
この感じ、すごく好きっ!!
思った通り、目的地までは大渋滞で…
だけどこんな時こそ、バイクは大活躍!
車の間を縫って、グングン進む!
ちょっと通り難い場面があっても、奏曲のテクニックなら他愛もなく進んでく。
ぎゅっと、その背中にしがみついてたら…
あっとゆう間に会場のビーチへ。
「こっち」
そう手を引かれて、早くも心臓に花火が上がる。
周りから見れば、恋人同士でしかない状況と…
隣に居てくれてる奏曲。
繋がれた手は、ふいに指を絡められて…!
花火より先に、この現実にうっとりする。
だけど誘導の先は、メイン会場と違う方向…
どうやら、混雑を避けた穴場があるとの事。
「さすが詳しいね…
いつもココに女のコ連れて来てたんだ…」
「あァ?
なんで俺がオンナなんか花火に連れて来なきゃいけねんだよ」
「えっ…
てゆっか!私っ、女なんだけど!」
「っ…、オマエはダチだろっ!」
その特別感は嬉しいものの…
その線引きは切ないね。
まぁ、ただの友達じゃないけど。
ちなみに言い分によると、このビーチは飲み会で知り尽くしてて庭みたいなもので…
この穴場は、夏の花火大会があった日の飲み会で見つけたらしい。
ともあれ、キスフレにここまでしてくれるだけでも…
十分幸せかな。
その瞬間、花火が上がる!
「うわぁ……!」
あまりの綺麗さに、続く言葉を失くした。
高校時代のバイト三昧とか、今の仕事柄とかで、花火自体ずいぶん久しぶりだったし…
初めて見た冬の花火は一層綺麗で。
それを大好きな人の隣で見れるなんて…
それだけで、泣きそうなくらい幸せだと思った。
瞬間。
頬に触れた唇…
身体がドクンと、激しく脈打つ。
たとえ頬でも、キスDrugの威力は絶大で…
むしろ頬だから、今までより特別に感じた。
だって愛しくなきゃ、こんな風にはしないでしょ?
そっと奏曲に目を向けると…
何事もなかったように夜空を眺めてて。
その綺麗な瞳は、眩しげに花火を溶かし込んでて…
なぜだか胸が詰まって、切ないくらいの好きが溢れる。
ねぇ、奏曲の心の中には誰がいる?
それとも誰も入れない?
花火の合間。
視線を送る私に、気付いた奏曲が…「ん?」って優しい瞳を向ける。
好きだよ、奏曲…
そんな気持ちで見つめ続けると。
一瞬、戸惑った様子で…
だけどすぐに、その手が私の後頭部に回されて。
仄かな熱が重なる。
ああぁ…っっ!!
久しぶりのキスDrugは、あまりにも強烈な刺激で!
気持ちも昂り過ぎてて、いつもより艶声が溢れたら…
「っ…、ダリアっ、外…!」
そう唇を解かれて…
切り替えるように、その肩に抱き寄せられた。
私は、余韻を残す身体を預けつつ…
奏曲がくれた眩い煌めきに見惚れながら…
今までで最高のイヴに浸ってた。
「…帰るか?」
「…
まだ、一緒にいたい…」
「ん、俺も…」
花火終了後、その返しに打ちのめされる!
今日はどーしたの!?
一生曰く、ほんとは寂しくて抱き癖しちゃう奏曲にとって…
会えなかった1週間は、そんな響いたの!?
私にとっては、嬉しい限りだけど。
それから。
晩ごはんとクリスマスらしくケーキを、外食で済ませて…
奏曲の家へ。
「今日はありがとうっ。
最っ高のイヴだった!」
花火と晩ごはんのお礼。
まぁ、今日に限らず外食はいつも奢りなんだけど。
「大げさかっ!」って、
少し照れくさそうに笑う奏曲に、ふと。
「ねぇ、遅番だったらどーするつもりだったの?」
「んー?…とりあえず待ってた。
まァ、花火はムリだったけど」
待ってたぁ!?
モールの近くまで来てたクセに、そこで3時間も待つつもりだったの!?
てゆっか!
今日あのコと過ごすんじゃなかったの!?
や、明日なのかな…?
「明日はどーしてる…?
その…会える?」
「ん、俺は今まで通り毎日会えっけど…
どした?」
あれ…
確かにあのコと約束してたよね?
しかも、毎日会えるって…
奏曲のプライベート、全部私にくれるの?
ヤバい…
今日の奏曲といい、期待してしまう…
「…おい、ダリア?」
「ね、奏曲っ!?
私の事、…どう思ってる?」
思わず、口から飛び出してしまった。
途端、動揺を示して…
困惑の表情で顔を背ける奏曲。
その反応は、言いにくい内容って事…?
聞いた事に、後悔と焦燥感が押し寄せる。
すると、再び私を捉えて。
「わかんね…?」
艶気に満ちた、切ない瞳で貫きながら…
その指の背が、頬に触れる。
そんな視線と状況に、浮かされるように囚われてると…
唇に、極上のDrugが注がれる。
それは今まで以上に、甘く、甘く…
身体まで溶かされそう。
だけど、この流れでキスするって事は…
質問の答えが、所詮キスフレだって事?
ねぇ、濁すなんて卑怯だよ…!
キスで誤魔化されたくないのに…
でもそれを求めずにはいられない。
しかもこのキスはあまりにも甘美で…
好きだよ、もうどーしようっ…!
好きで、好きで、艶声が泣き声に変わりそうだよっ…
不意に。
いつしか抱き締められてた身体が、その場にゆっくり崩された…!
閉じ込めるように、両手を突い立てた奏曲が…
苦しげで堪らなそうな瞳で見下ろして。
「ごめんっ…、もうムリ…」
私の手にキュッと指を絡めて、その身体が落ちてくる。
ドクン、と胸打つ瞬間…
そこに突然の音!
側のローテーブルに置いてる私のケータイから、着信音が響いた。
反射的にそれを映した奏曲は、2度見して…
即座、動揺を走らせる。
え、なに…?
そんな疑問も束の間。
襲うように重ねられた唇。
その舌は荒々しくそこを占領して、
グチャグチャに乱して暴れて、
私を悶え狂わせたのも、僅か…
急に動きが止まった。
それに再び疑問を抱いたと同時。
奏曲はクッと身を怯ませて。
力強く絡めてた手と、身体を解くと…
「出ろよ、…隼太さんからだよ」
そのケータイを取って、差し出して来た。
身体を起こして、受け取りながら…
別れてから初めての電話と、今の状況に、意味が解らず混乱する。
「…っ、良かったな。
イヴの日に、しかも今の関係で向こうからかけてくるとか、リベンジ成功かもな」
言い終わるのを待たずに…
切れた電話。
心を握り潰されたようなショックと!
信じたくない気持ちで、奏曲を見つめた。
「バカ、早く掛け直せよっ…
心配すんなって…!
キスフレん事は誰にも言わねぇし…
俺らもただのダチに戻りゃいんだしっ…」
そう笑う奏曲に…
胸が何度もえぐられる!
やっぱり罪悪感からの慰めだったんだ…?
ねぇ、私が隼太の所に戻っても平気なのっ!?
張り裂けそうな思いの傍ら…
その笑顔は、笑ってるはずなのに儚げで…
消えてしまいそうなくらいで。
身動きも取れないほど困惑する。
「何ためらってんだよ…
だったら…
俺との人生選ぶか?」
耳を疑う、欲望以上の選択肢に…
あまりの衝撃で、意識が遠のきそうになる…!!
「っ…、引いてんなよっ…
いーからほら!さっさと掛け直せってっ…」
そう悲しく笑う姿と…
ジワジワ実感をもたらすその選択肢に…
胸が異常なくらい震えて…!
涙がせきを切ったように溢れた!
「いい、のっ…?」
ねぇそれっ、いいのっ!?
奏曲は、優しくて儚げな眼差しで…
私の頭をクシャリと撫でて、頷いた。
「泣くなよ…
いーに決まってんだろ?
俺の事は気にすんなって…!
早く掛け直してやれよ…」
あれ。
なんだか違う方向に…
「っ…、違うよっ!そーじゃなくてっ…
奏曲との人生…選んでいい、の?」
私の選択を受けた、その人は…
儚げな表情を怪訝に曇らせて…
壊れたかのように、唖然と固まる。
「ウソ、だろ…
え、マジかよ…!」
我に返ったと同時…
逆に引いてるっ!?
うそっ、まさかただの誘発言葉だった!?
今さらそんなっ…
カミングアウトしちゃったし!
てゆっか…
引かないでよ…っっ!
「だって…!
もう、どーしようもないんだもんっっ…
好きで、大好きでっ…
奏曲しか考えられないよっ!!」
その瞬間。
ぎゅっと、ぎゅっと、ぎゅううっと…
壊れそうなくらい抱き締められる…!
「…っざけんなよ…!
俺がどんな思いだったと思ってんだよ!
ぜってぇもう一瞬たりとも離さねぇ…
後悔しても遅ぇからな?
つか、後悔なんかさせねぇけど」
「っっっ…!!
奏曲ぁっ…!!」
嬉しすぎて発狂しそうで!
愛しすぎて全力でしがみついて!
"一瞬たりとも"は無理だけど、とは思いながらも…
心だけは絶対離さないかの如く。
強く、強く、抱き締め合った。
「…っ、奏曲っ!?」
不意に抱きかかえられて、戸惑いの声をあげると…
すぐにベッドに降ろされる。
「もー遠慮しねぇ、つか止めらんね。
全部俺だらけにする」
私にそうキュン爆弾を投下して!
さっきと同様、その身体が落ちて来る。
心臓は破れそうなほど拍動して…
思わず手を衝立てて、その先に進むのをガードした!
両思いの奏曲とこんな事…
刺激が酷すぎて耐えられないかもっ!
「っ…、拒むなよ!
俺もう、とっくに限界…」
だけど容易く、ガードの手は封じられ…
私に、奏曲の重みが沈み込む。
「莉愛…」
愛しそうに、初めて名前を零されて…
その甘い声音続きに、唇を結ばれて…
それだけで身体が激しく疼く。
肌を愛でる刺激は…
細胞を破壊していくようで。
何回その名前を口にして、
何回好きって言ったか解らない。
もうこれ以上は無理なのに、もっと
深く深く捩じ込むように、ぎゅっと強く求められて。
身体は、ありえないくらいの甘い悲鳴をあげて…
狂いそうなほど疼いた。
仕舞いには、あまりの気持ち良さに…
精神崩壊するかと思ったくらい。
奏曲に抱き包まれて。
余韻に浮かされながら、眠りに落ちかけてると…
そっと頬を撫でられて。
再びその麗しい姿を捉えた。
「…ん?…なに?」
「っワリ、起こしたか?
ヤ…
俺の腕ん中に居んだな、って…」
その言葉が、キュッと胸を締め付ける。
「好きだよ、奏曲…」
それに対しては、「ん…」と目を細める反応。
てゆっか…
まだ1度も言われてない!
「何で好きって言ってくれないの?
せめて"俺も"くらい返せないのっ!?」
そう食いついて、ハッとした。
「まさか…
やっぱりあのコの事…」
「あァ?誰だよ、あのコって…?」
そこで、とぼける奏曲を問い詰めると…
「妹ぉっ!?」
なんでも、あのワインは両親へのプレゼントで…
結婚記念日を忘れてたら、思い出した妹さんに急遽呼び出されたらしい。
さらにクリスマスの件についても…
妹さんはそのビジュアルから、カーサービスのアイドルらしく。
みんなからのクリスマスプレゼントを受け取りに来れるか?って話だったらしい。
ま、紛らわしい…
私のあの苦しみは、なんだったんだろう…
2人してすっかり起き上がって、話を続行。
そしてふと気づく。
「あれ、でも…
兄妹で腕絡める〜!?」
「あ〜アイツ、腹黒ぇからな。
自慢出来るビジュアルだからって、外じゃあんなだよ」
「…
自分で言わないでよ」
「っ、いちいちうるっせぇな!
オマエこそカツに気安くキスされてんじゃねぇよ!」
「え…
見てたの!?あれっ…!」
そーいえばカツくん、あの時"あっ!"って…
あれは奏曲に見られたからなんだ?
「ふ、不可抗力だよっ」
「だとしても、オマエ…
隙あり過ぎなクセに、オトコ惑わし過ぎな。
俺だってどんだけ悩まされたと思ってんだよ?」
「惑わしてないよっ!
奏曲の被害妄想じゃないっ!?」
「オマエっ、サイテーかっ!?
考えて見ろよ!
隼太さんとのリベンジ狙ってたクセに、
自分からキスしてくるし、誘ってくるし!
だいたい、"会いたい"ってなんだよ!?
脈アリかって期待させといて…
オマエ、好きなヤツにはなんも言えねんじゃねかったのかよ!?
彼氏のダチもありえねぇっつってたよなァ!?
俺は対象外なんだって思うだろっ…」
今さらのように…
この中毒症状を認識した。
確かに今までは、好きになるほど…
相手の状況とか考え過ぎたり。
ウザがられるのとか嫌われるのが怖くて、何も言えなくなったり。
なのに奏曲には…
そんな事より欲求の方が勝ってて、
止められなかった。
"会いたい"なんて、簡単には言えなかったはずなのに…
求めて、求めて、病みつきになってた。
「ほんとだね…、ごめん……」
「ヤ、別に、責めてるワケじゃ…」
「けど奏曲だって…!
誰にも執着しないんじゃなかったの?
そーゆってたよねぇ?」
「っと、反撃か?
つーか、カミングアウト出来るワケねぇだろ!
隼太さんとの事で足引っ張っといて、言えねぇよ…
しかもオマエさ、
"一生の彼女なら幸せ"的なコト吐かしといて、隼太さんを理由にフるとか…
俺なんかもっと可能性ねーだろっ。
抱き合って眠っても、抱き癖程度にしか思われなかったしなァ?
せめてキープでもなんでもいーから側に居たかったつーのに、それすら望みを断たれたら…
そーやって自分に言い聞かせるしかなかったんだよ」
どーしょうもなく、切なくなって来た…
「ねぇ、それって…
いつから私を、想ってくれてた…?」
「…
自覚したのは、飲み会でオマエとケンカした時。
けどたぶん、最初から…」
「っ…
最初、って…?」
「だから…
フツー、気にもなんねーヤツ送んねぇだろ!
どんだけヒマだと思ってンだよっ」
嬉しいのか、切ないのか…
心が溢れて、愛しくて堪らなくなって…
「〜〜っ!
ねぇ、奏曲っっ…大好きっ!!」
「ん…、泣くなって…」
「ぅぅっ…
じゃあ好きってゆってよ…!」
「オマエな…
思いが強すぎて言えなくなん時もあんだよ…!」
そういって代わりに、ぎゅっと抱き締めてくれた。
そうだね、言葉なんかじゃない…
どんなに甘い言葉を囁かれても、行動が伴ってなければ意味がない。
奏曲を見れば解る…
大事に思ってくれてるって。
だから心の何処かで、ずっと期待がくすぶってた…
「第一、キスでわかんなかったか?
俺がどんな狂いそーな思いで、気持ちブチ込んでたと思ってんだよ」
「…っ、
それって、愛…?」
「しかねぇだろ…」
ヤバい…
うう嬉しいっっ…!!
確かに、その愛でるようなキスに…
愛を感じてた。
だけどそれは、今まで味わった事ないくらい強大に感じて。
なんだか解んなくて、確かめたくて。
翻弄されて、もっと欲しくて堪らなくて…
それはキスDrugの主成分…
愛情ってゆう、最強Drug。
きっと、その愛の中毒になってたんだね…
「莉愛…」
そしてまた、最強の愛情Drugが注がれる。
週末、今年最後の飲み会。
「あのね、一生っ…」
奏曲との事を、ちゃんと報告しようとして…
「知ってるよ?アイツに聞いた。
よかったな、莉愛…
俺が見守れんのも、ここまでだなっ」
優しくも、寂しげな笑顔が向けられる。
「っ…
一生には感謝してる…
今までいつもいつも、本当にありがとう。
飲み会参加もね、一応今日で最後にするつもり」
「…そっか。
寂しくなるな…
まぁ、アイツの事頼むよ。
悔しいけどさ…
アイツが本気で誰かを好きになれたのは嬉しいし、莉愛には1番合ってると思う。
なんか自然体で…
いつも楽しそうだったもんな?
ほんとは解ってたんだけど…」
笑顔を切なげに曇らせていって…
最後のセリフで視線を流す姿と。
相変わらず友達思いな一生に…
胸がキュウと締め付けられる。
そして確かに、言われてみれば…
奏曲の前だと、いつもありのままで居れた自分に…
今さら驚く。
なんだか急に愛しくなって…!
レディースのコ達と話してるその張本人に、視線を向けると…
バチっと絡んで!
やたら心臓が跳ね上がって、思わず逸らした。
あまりにも麗しいその人が、もう自分のモノだなんて…
なんだかまだ信じられない。
その瞬間、ガバッと…
「リアさんっ!聞いたっす!!
ガチでショックっす!!
つっか、やっぱ奏曲さんじゃないすか〜!」
やって来たカツくんに後ろから抱きつかれる!
慌てて解こうとするも、相変わらず離してくれないカツくんに…
とりあえず、奏曲の件と飲み会最後の件を告げて。
それらへのブーイングをなだめてる所で…
「カツ!!てめっ…
俺のモンに触ってんじゃねーよっ!」
すぐさま戻って来た奏曲に、引き離される。
奏曲さまっ…
なんて嬉しいお言葉を!
「いーじゃないすか!!最後だし!?
奏曲さんはこれからひとりじめ出来るんすから、ケチケチしないで下さいよ!」
「そーゆー問題じゃねぇだろ!!
次は殺るぞオマエっ!?」
「莉愛?奏曲の独占欲がウザくなったら、俺んトコ来ていーから」
「一生ィ…
未練がましんだよ、てめーわ!」
そーやって戯れ合う3人を眺めながら、
少し寂しい気持ちになったけど…
これからは奏曲だけを大事にしたかった。
ちなみに。
その日、後でやって来た隼太は…
いつも通り知らんぷりで。
電話の内容はわからないままだけど…
今はもう、知りたいとも思わない。
その抱えてる問題を、心配する気持ちは残ってるものの。
それを支えるのは、きっと…
同じ日、ふいに見つけたユリカの眼差しを思い返す。
それは、隼太を切なげに見守ってて…
私の視線に気付くと、いつもの小悪魔顔に戻った一瞬のもの。
だいたい、どんなにお気に入りは代わっても…
あのコだけは、ずっと1番近くに居続けてる事が物語ってる。
なにより私は、日々進行してく中毒症状に翻弄されてて…
それどころじゃない!
一緒に居る時はもちろん、たとえ隣に居ない時でも…
身体中に残る奏曲の愛跡が、
心を埋め尽くしてる奏曲が、
私を常に悶えさせて欲させる。
「ねぇ、あい…」
愛してる…
余韻に溺れながら、私を抱き包んでる奏曲に告げようとして…
ためらう。
ー「思いが強すぎて、言えなくなん時もあんだよ」ー
今になって、実感する。
「…ん?」って艶やかな優しい眼差しで、続きを促されて…
思わず。
「…っ、アイス食べたいっ!」
「っ、あァ!?今かよっ!
…待ってろ、すぐ買ってくっから」
呆れ口調でも、ほんとに優しくて…
すぐに服を着てリクエストを聞くと、夜中の寒空に消えてしまった。
そんな奏曲が愛しくて堪らなくて!
暫し、ベッドに残った温もりの上でジタバタしまくる。
「なにやってんだよ…」
「…
あ…、早かったね…」
今、消えてしまいたい気分です。
「クッソ寒かったからな、ダッシュで買って来た。
つか、あっためろよ」
喜んでっ!!
といっても、私がカイロ代わりに抱き包まれて…
2人して、スティックアイスにかぶりつく。
「ねぇ、そのうち飽きたりしない?」
ふと。
この幸せ過ぎる日々が、今までみたいに消えてしまわないか不安になる。
「あァ?バカにしてンのか?」
今のどこにそんな要素があったのかと思いながら…
「だってまた、お世話ロボットになったら…」
「そんな気配すらねーけどな…
つか俺はもともと、自分の気持ちばっかぶつけてくるオンナとか、ワガママなオンナとか嫌いで…
一生みてぇに健気なオンナのが好きなンだよ」
「え…
じゃ逆にっ、今の私ダメじゃん!」
「だから、もともとっつったろ!
今は、惚れたオンナのワガママなら、むしろ嬉しいっつーか…
とにかく俺は!どんな莉愛でも狂いそーなほどっ、」
そこで詰まった言葉に…
すかさず、斜め後方を見上げる!
好きって言っちゃう!?
とうとう言っちゃう!?
「続きに目ぇ輝かしてんじゃねーよ…」
「ええっ!だって…気になるもんっ!」
「うっせぇ、忘れろ!
つーか今後一切、離れんの想像すんのも許さねぇからな!」
それはそれでっ…
胸がキュンすぎて大変な事になってるんですが!!
「っっ…
じゃあ絶対離れないって、保証ある…?」
「面倒くせぇオンナだな…
そんな不安ならすぐにでも、……一緒になる、か?」
「なんでそーなるのっ!?
そんっなヤりたいだらけなのっ!?」
「そーゆーイミじゃねぇよっ!
つか、惚れたヤツとヤりてぇのは当たり前だろ!?
オマエは違うのかよ?」
「っ、違わないけど…
…誤魔化さないでっ!」
「っせーなァ、後悔させねぇっつっただろ!
信じて付いて来いよ!」
そんなふうに言われたら…
「…わかった。
信じる…」
不安だけど。
とションボリ折れる…
もうどっちが年上なんだか。
「…ったく」
ため息混じりの声のあと…
ふいに零された耳打ちに、再起不能。
「どんだけ愛してると思ってんだよ…」
チュッ、耳にDrug。
「俺、莉愛中毒末期レベル」
今度は、頬にDrug。
「もう、やめんの手遅れ…」
最後は唇へと…
中毒を進行させる、愛情Drugシンドローム。
しかもこの中毒症状は、とっくに私だけじゃなく…
"俺、莉愛中毒末期レベル"
そんな私達の中毒愛は…
同時に発生してたのか。
私から奏曲へ、奏曲から私へと一連なのか。
なんにしてもそれは、最高の…
なんって幸せなシンドローム!
ーENDー
「LJS 〜ラブジャンキーシンドローム〜」 clover cat @clovercat
★で称える
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