第2話 実験をしましょう②

 あれから、雨は直ぐに止みわたしたちは、バスの停留所をでて、今は駅の電車、乗り場にいる。

「おじいちゃん先生、これありがとう」

 服が乾くまで、スーツのジャケットを貸してくれてた。

おじいちゃん先生のおかげ、ある程度乾いてくれて、ブラウスを気にしなくていい。

「なになに、紳士の務め、当然のことじゃ」

 優しい微笑みで、少し心温まる。

「ええ、でもまだまだ、エスコートは続くからね?」

「任せなさい。お別れするその時までしっかり務めさせてもらうつもりじゃ」

「よろしく」

 わたしはウィンクをして、お願いする。

「しかし、雨が降るもんじゃから、こんな狭い距離の乗り場じゃすぐいっぱいじゃいのぉ」

 たしかに、都会とかにあるような駅と違って、路面電車だからプラットホームなんて横文字より、乗り場なんて安い感じのが似合う。

 おかげで、人が溢れかえりそうなくらい多い。

「これだと電車の中も多いかもね」

「じゃのぅ、まぁ仕方ないの こんな田舎でも交通手段の要じゃ」

「ほんと、地下鉄もない町だもんねぇ~」

「狭いうえにみな行くとこなんて、街中だけじゃ」

 ほんとに、栄えているとこが一か所でそこに人が集まる。その交通手段が、バスか路面電車でしかない。


「来たみたいじゃな、多くないことを祈りたいとこじゃが、待ってるのを見ると絶望じゃ」

「…あきらめよう」

 電車が到着して乗り込んだはいいけど、ぎゅうぎゅうだ。

しかもアツイ。クーラーがまったく効かない。

「おじいちゃん先生、大丈夫?」

「ほっほほ、なれっこじゃて」

 汗をかきながらいわれても…。わたしもうっすらだけど汗がでている。

「あつい…おじいちゃん先生」

「我慢じゃ…」

 そうだけどぉ~。そう言いながら周りを見渡すと、他の乗車客も汗を拭っている。

 と、見てまわってたら、急ブレーキを踏まれたのか、警笛を遠くに、電車が揺れる。


 ガタン…


「キャっ」

 揺れに耐えきれず、倒れると思ったら、わたしの肩に当たるものが…

 ――先生の肩だ

「…大丈夫かの?加納くん」

「……ええ」

 おじいちゃん先生が支えてくれてるのぼーっと見てて、踏ん張りを忘れてると、電車が再び、動き出した。

「わぁぅっ」

 電車が揺れて、その反動で、おじいちゃん先生の胸に寄りかかってしまう。

「ごめん、おじいちゃん先生」

 寄りかかった状態で、顔をあげて謝ってしまう……おじいちゃん先生?

「……あっ…うむ、大丈夫、大丈夫じゃ」

 あれ?なんか照れてる?

わたしは、そのまま様子を見るように、そのまま寄りかかったままでいる。


「…か…加納くん?その…」

 …ふふ…照れてる…わたしはわかった。

「ふふ、なんです?おじいちゃん先生」

「いや、その、あれじゃ、ちと近いかも」

 その返答に、わたしの中の何かが目覚めそうだ。

「仕方ナイデスヨ~混ンデマスカラ~」

 なんて、悪戯口調で返事をする、なんか楽しい

「揶揄うのは、その変にしてくれ…」

「エスコートしてくださるんでしょう?」

 おじいちゃん先生は、困ったようにわたしを見降ろしている。

 楽し…

「困った、お嬢様じゃ…」

 半ばあきらめて、そのままを維持してくれるらしい。

 まだまだ終わらせたくないと、思っちゃう。


「…くすっ」

 わたしの笑う声が聞こえたのかな、またチラッとこちらを見てくる。

 わたしはそのまま、カバンを下に置いて、両手をおじいちゃん先生の腰に手をまわす。

「こ…これ…」

 おじいちゃん先生は、小声で注意してくる。

でもそんなのは聞いていられない。まだまだこれからよ?

「おじいちゃん先生、せっかくだし…」

 きっとこの時のあたしの顔は、悪魔のような…

そうね、それは自分でも悪い比喩だわ…

せめて、小悪魔ね そんな顔をしていたはず…

「エスコートのお礼を先にしちゃうね」

 わたしは、そのまま、頭をおじいちゃん先生の胸に預けて抱きしめる。

「か、か…加納くん、やめたまえ…」

 そんなのきいてられない。

「悪戯がすぎるぞぃ…」

 わかってるわ、そんなの…それを楽しんでるの、楽しいの…

「これ、聞いてるのか、加納くん」

「…暖かい…」

 わたしは、おじいちゃん先生の温もりに、心地よさを感じていた。

「…加納くん……」


 ―――――――――――ッ。


「加納くん?」

 わたしの異常に気付いたのか、ううん、違う。

わたしが身震いする感じで震えたからだ。

この感じ…

「先生…」

 いつも、先生の前におじいちゃんをつけるのを忘れくらい、今の状況が嫌で嫌でたまらない。


――ちかん


小声で、おじいちゃん先生に聞こえるくらいに伝えた――

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