モノレール
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葭川公園駅、23時16分発
「あれ、誰が乗るのかな」
パルコの前の交差点で青信号を待っている時、明希はふと、という様子で、頭上で輝く車体に投げつけた。僕も明希につられるように頭の上をゆっくり通り過ぎる県庁前駅行きの千葉都市モノレールを見上げる。
「ねぇ、誰が乗るんだろ」
明希は振り返りながら僕に聞いてきた。
「だって、県庁の辺りからなら本千葉か千葉中央の方が便利じゃない?乗り換えなしで津田沼にも船橋にも出られるし」
明希の大きな目が僕を覗き込んでいる。白い頬にうっすらと赤みが差している。僕はふう、と息をついた。
千葉氏は鎌倉時代の武士だから、本拠地の千葉には天守を持つような城は築かない。だからあの千葉城ってただのイミテーションなんだぜ。そう高校二年の時、この大きな目をしたクラスメイトに説明して以来、彼女はいまだに僕がなんでも知ってると思い込んでいるらしい。だが生憎、この件に関して僕は答えを知らない。何より、久々のアルコールでふやけた脳で何か考えようというのが無駄なのだ。僕はヘラリと笑って言った。
「さあな、知らんな。乗ってみればいいんじゃないか?」
「なるほど、そういう答え方するんだ」
明希はそう悪戯っぽく笑った。その瞬間、僕は答えが不適切であったと後悔した。僕の回答に、彼女は悪戯心を発揮し始めたらしい。明希は言い出したら止まらない。彼女は何も変わっていないようだ。
「そういうってことは、坂田は一緒に来てくれんでしょ?」
「いや僕はこの後の三次会に誘われてるし」
「あたしも誘われてるわよ。どうせ駅のとこのカラオケでしょ?まだみんな飲んでるし、少し寄り道しても大丈夫でしょ」
そう言うと明希はスタスタと交差点を渡り始めた。ちょうど目の前に、葭川公園駅があった。
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