9.ササヤカな日々
耳元で感じる晴生の鼻息が
だんだんと熱くなる。
服の中で餅みたいに
こねくりまわしていた手の指先が
突起に触れるとピタリと止まった。
「コレも触っていーの?」
指の腹が先を撫でる度に
ビクビクと震える体に甘い声が響いた。
「ちょ……、そ、それは……っ」
「いいよな?」
悪魔の囁きが正常な判断を奪う。
指先からの刺激に逆らえない。
こくと頷いて強くつままれた瞬間
ビリッと快感が走って
小さく叫び声を上げた。
慌てて手で口を押さえる。
体全部がドクドクと脈打って
今にも心臓が壊れそう。
「やべ。興奮してきた」
呟いた晴生がジャージの下を脱いだ。
「ほぇっ?!ちょ、こ、これ以上は無理だよ」
オーナーや他の人がそばで寝ている。
「サヤカが期待するようなことはしねぇよ」
晴生はそう言うと左手だけを胸にやって
反対の手で自分のモノを慰め始めた。
背後に熱っぽい体と荒い息遣い、
右手の動く振動が伝わってくる。
まさか自分でしてる?!
「な……っ、何考えてんの」
「出したい。いい?」
「だっ?!他の人に見られちゃう」
「朝まで起きないから平気だろ」
「えっ、えー……」
見られなければセーフ……?
悩む私にお構いなしに
指先と右手の動きが激しくなる。
数分と経たないうちに
色っぽい声でとんでもない台詞を吐いた。
「サヤカ、出そう……っ」
「ふぇっ?!」
振り返っても暗くて見えないが
素早くおしぼりに手を伸ばして
放たれたモノを受け止めた。
「ナイスキャッチ(笑)」
「どこに出すつもりだったのよ……」
「後で掃除すりゃいいかなって」
「掃除すんの私でしょうが」
「そうだな(笑)」
笑いながら右手で私の頭を撫でた。
「ちょ、その手で頭触んないで」
「あ、ごめん(笑)」
二人で一階に下りて後処理をした。
「私帰るね」
「あー、俺まだアルコール抜けてねぇな」
「いいよ。大した距離じゃないし」
「煙草買いに行くついで送るからさ。一服付き合えよ」
カウンターに並んで座って煙草を吸う。
深く吸ってもむせなくなっていた。
晴生はさっきの出来事などなかったように
煙を吐き出している。
男友達とはあんな事しないでしょ?
聞いてもいいものだろうか。
横顔を見つめていると
視線に気付いた晴生と目が合った。
「サヤカ、あのさ」
真剣な目にドキッとする。
「な、何?」
さっきの事を何か言われると思った。
「年明けに新しいバイトの子が来るから」
「は?」
「サヤカと同い年の女だから宜しく頼むな」
「はあ……」
唐突に新入りの話をされて
私の思考は迷子になった。
吸い殻を片付けて
ダウンジャケットを羽織り
歩いて家まで帰った。
「良いお年を」と晴生が言う。
年内には会うこともないし
初詣に一緒に行こうもなさそうだ。
「あっ、良いお年を」
私も挨拶をして大きな背中を見送った。
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