170.Sな彼女とNな彼

「隆人くんいるんじゃないの?」




ベッドに接する壁を指差して


声をひそめた。




親のいる日は私を呼ばないけど


紀樹は弟には色々と遠慮がない。


隆人くんが人見知りなのは


一体誰に似たんだろう。





ニヤリと笑った紀樹は


下だけをさっと脱ぎ捨てると



「実結も服は着といて」



小声で言った後に


スカートからショーツだけを


そっと抜き取った。





スカートの中を這う指に


漏れそうになる声を手で押さえながら


体を震わせた。




その手をどかしてキスで塞がれながら


熱い紀樹を受け入れる。




「んん……っ!」




両手を繋がれたまま


唇を解放されると


声が漏れてしまう。




ベッドがギシと音を立てると


心臓もドクと跳ねる。




唇を噛みながら


紀樹に首を振って


もうダメと伝える。




潤んだ艶っぽい瞳に見下ろされ


何度も絶頂を迎える。




紀樹はビクビク震える体を抱きしめて


「俺ももうあかん」と呟いて


激しいキスとリズムを刻む。




そして、弾ける。




汗ばむ体と荒い息遣いを落ち着かせながら


私もすっかり変態になってしまったと思う。





今日はたっぷりデートを楽しんでから


まったり夜を楽しみたかったのにな。





まあいいかと思った時に



ズキリとお腹に痛みが走った。




これはヤバいやつだ。




どうしよう。




無事に一日を過ごせるかな。





悩みながら鏡の前で髪を整えていると


後ろから紀樹に抱きしめられた。




「隆人は今日はおらんねんけどな」




「はあっ?!」




私の楽しみや気持ちも知らないで。




「何でそんな嘘つくの?!」




「別に嘘はついてへんやん」




何も知らないことは


紀樹が悪いわけじゃないって


わかっているから自分に腹が立つ。




優しい腕をふりほどく。





「サイテー」





それは紀樹に向けてる言葉じゃない。




私自身に感じていることなのに。




これはただの八つ当たりだ。








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