133.Sな彼女とNな彼
思考はまとまらない。
告白したつもりが
プロポーズされている。
私の身に何が起きてる?
薬指のエメラルドが妖しく光る。
「えっと……」
正解を探して彼の顔を見ると
潤んだ瞳が待っていた。
「実結、愛してるよ」
ドクンと心臓が跳ねる。
魂が痺れる、の意味がわかった。
心も体も震える。
何十年後も彼の隣にいる自分の姿が
瞳の奥に映る。
「か、考えさせてください」
「何を考えるん?」
「いや、だって、けっ、結婚って……」
強い風が吹いた。
置いてあったスズランの花束が落ちて
幾つか白い花が散らばる。
そっと拾い上げると
甘い香りがした。
「仕事続けたいなら出張が終わるまで別居でもいいし……」
「ま、待ってください。そんなにすぐ決断できません」
「なんでやねん」
「今すぐ結婚する必要ありますか?」
「俺は形式にこだわる必要はないと思ってるけど」
「それなら何で……」
「結婚前の娘を外泊させるのは気が引けるやん」
「えっ、そこですか?」
私の両親は古い考えの方だとは思うけど
彼氏と泊まりに行くことを止めたりしない。
「一秒でも長く一緒にいたいねん」
「別に外泊しても何も言われませんよ」
「それでも俺は実結と結婚したい。離したくない」
真剣な瞳に見つめられると
息が止まりそうになる。
「私も離れたくないと思ってます」
「ほんなら……」
「でも、私まだ西川さんのことで知らないことが多すぎます」
「例えば?」
一瞬の間が空く。
「趣味は何ですか?」
聞いた私の顔を見て彼が笑った。
「お見合いか(笑)」
「お見合いする人たちが聞くようなこともまだ知らないです」
ぽんぽんと私の頭を撫でて答えた。
「ドライブと読書やな」
「本読んでるとこ見たことありませんよ」
「家でしか読まへんもん。外やと電子書籍やし」
「どんな本読んでるんですか?」
「主に仕事関係の本やけど、ミステリーも好きやで。実結がよく読んでる橘レイのシリーズは全部持ってる」
「何で私の読んでる本知ってるんですか?!」
「いつも持ち歩いてるやん(笑)。他に質問は?」
幾つか聞いてみたけれど
そういう事は枝葉の部分であって
核の部分は揺るがない。
彼の答えを知る度に
意外性も含めて好きが募るだけだった。
何があっても愛し合って生きていける。
そんな気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます