119.Sな彼女とNな彼

午後から園子に業務内容を説明した。




「えー、実結の説明下手すぎてわかんなーい」


う、ごめんなさい。


「マニュアルわかりづらっ!」


それは私が作ったんじゃないけど。


「非効率だよねー」


社内ルールだよ……。




園子は周りに聞こえるトーンで


嫌味を撒き散らした。




表面的には邪険にはしないけど


勘違いでも気のせいでもなく


私に対する敵意を感じる。





定時に帰って行った園子を見送ると


机に突っ伏した。





何で?


大賞取ったのは園子で負けたのは私だよ?


私の方が恨めしく思っていい場面よね。




ん?


もしかして私が大賞だった?




パソコンで社内報を見返した。



『大賞 秋山園子』



って書いてある。




知ってるよ!




私何か園子に嫌なことしたっけ?



約一年前から会っても話してもない。



本当に身に覚えがない。




頭を抱えていると


帰り支度をした朔くんが横に立っていた。



「実結さんに相談したい事があるんですけど」



「何?」



「ここじゃアレなんで、飯食いに行きません?」



「んー、わかった」




二人で駅前の焼き鳥屋に入った。




半個室のお洒落な空間で向かい合って座る。



一杯だけとビールで乾杯した。



「優秀賞おめでとうございます!」



「……ありがとう」



「嬉しくないんですか?」



「大賞が欲しかったんだもん」



「だもんって……(笑)」




私の生み出したキャラクターが


誰かの笑顔や元気の素になることに


憧れていた。




「そういえば朔くんとご飯食べるの久々だね」



「止められてたんで……」



「止められる?誰に?」



「あ、いや。えっと、実結さんって秋山さんと仲悪いんすか?」



「園子と?前は仲良かったよ」



「今はバチバチっすよね?」



「私嫌われてるよね、とは思ってる」



「何で嫌われてるんすか?」



「こっちが聞きたいよ」



もうため息しか出てこない。



「僕は実結さんの味方なんで。負けないでください!」



朔くんは立ち上がって胸を叩いた。



「あはは。ありがとう。座って(笑)」





帰る時も励ましの言葉を繰り返してくれた。




もしかして元気付けようとしてくれたのかな。




空を見上げると三日月が浮かんでいた。











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