108.Sな彼女とNな彼
「ごめんなさい」
「あんまり謝られたら余計に傷付くやろ(笑)」
「うっ、そうですよね。すみません」
「まあええわ」と彼は私のそでを少し捲り
小さな腕時計を巻き付けた。
「これは……?」
バレッタとお揃いのデザイン。
「俺からのクリスマスプレゼント。って言ってもそれ昔の貰いもんやから値段は気にせんといて」
貰い物?
「レディースブランドですよ?」
蝶がモチーフの華奢なスタイル。
カレンダー部分の花が可愛い。
「高三の時にオカンに頼んで買ってもらったんやけどな。話すと長くなる……」
昔話が始まる前に閉館を知らせるアナウンスが
静かに流れた。
オルゴールのゆったりしたメロディーと裏腹に
早く帰れと急かされる。
「あ、時間ですね。ありがとうございます。私何も用意してなくて」
「ええよ。押し掛けたんは俺やから」
「嬉しかったです、よ?」
コートを羽織る彼の背中に呟くと
はにかんだ笑顔が振り返る。
「そこで素直になられると押し倒したくなるんやけど(笑)」
「やめてください」
「すぐにでも連れ去りたいとこやけど、マミヤちゃん送ったら会社に戻らなあかんねん」
「仕事ですか?さっきホットワイン飲んでませんでした?」
「ノンアルコールやから大丈夫。行くで」
いつか自然と繋がれた手みたいに
自然と彼と結ばれる日が来るのかな。
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