88.Sな彼女とNな彼

駅まで少し回り道をして歩く。



どうしても気になって



解消しきれてないモヤモヤをぶつけた。




「そう言えば、三鷹さん元気そうなんですけど……」



「あっ、病院の話か。すっかり忘れてたわ」



「大丈夫なんですか?」



「うん。樹理ちゃんのお母さんが夜中に救急の外来で来た時にたまたま廊下で会ってやな」



「そうだったんですか」



お母さんか。


一晩中ずっと王子と一緒だったなんて


やっぱり大袈裟な話だったんだ。



「入院することになったって落ち込んでたから、励ましたりは……してたな」



「一晩中ですか?」



「いや、俺は仕事やから。でも、休憩時間に一緒に飯食いに行ったり……みたいな?」



みたいな?



って可愛く言ったところで


真夜中に一緒にいた事実はあったんだ。



明るい時間にイチャイチャしてる二人が


夜にそばにいて本当に何もしない?



「それで三鷹さんは元気に会社に来れてるってわけですね。良かったですね」




勝ち誇った三鷹さんの顔が浮かんだ。



悔しい。



ううん。



苦しい。




「ちっとも良かったなんて思ってないんやろ(笑)」




「お、思ってます」




「マミヤちゃんが不安になるような接し方はしてへんよ。これからはもっと気を付けるし、貞操も守ってるやん」




「私がそんなこと望む筋合いないので結構です」




彼女みたいなこと、言えるわけない。




「一年貞操を守ったら俺ら付き合う約束やんか」




「そんな約束してません」




「したやん。もっと早く彼氏と別れて俺と付き合ってもいいんやで?」




「付き合いません」





揉めていると駅に着いた。





バッグから定期を出そうとした時



柱の陰にトンッと押し付けられた。




「なっ、何するんですか?!」




「しー。動いたらあかんで」




彼は私を覆い隠すようにして



改札の方を見ている。




「誰かいるんですか?」




「朔と……みゆきちゃんやな」




「えっ?朔くんが北山さんと?!」




北山さんは隣のグループにいて


一緒に仕事をすることもあるけど


朔くんと喋ってる姿はあまり見ない。




「あの二人はどっち方面の電車に乗るん?」




「北側なので私とは逆です。それより本当に朔くんと北山さんですか?」




顔を出そうとすると


体ごと押し戻された。




「動くなって言うたやろ(笑)。今日は俺は打合せ出てへんのに、ここにおったら不自然やん」




「そうでしたね。あれ?じゃあ、何でここにいるんですか?」




「マミヤちゃんに会いに来たに決まってるやろ」




間近で見詰められると



胸の奥がきゅっとなって



息が出来ない。




「そう……でしたか」




「今日はえらい欲しがるなあ。やっぱり寂しかったんやろ?(笑)」




図星を隠せない。



顔も上げられない。




「もう、それでいいです」









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