73.Sな彼女とNな彼

古い冷房はゴォォと音を立てて



部屋を極限まで冷やしていた。




冷たい布団。



冷たいシーツ。



冷たい枕。





野本くんの体が温かい。





冷えた手足をさりげなく


温かい素肌に絡ませる。




「実結、足冷たいね」




「だって寒いんだもん」




エアコンの温度下げすぎ。




「実結は脂肪が少ないからでしょ。もっと食べなきゃ」




「食べてるよ。消費カロリーのが上なだけ」




野本くんは食べすぎだよ。







「ちょっと温まってきたね」




大きな手が太ももを撫でると



バスローブの紐をほどいた。





熱を帯びた唇が



鎖骨から首筋を這う。





頬に触れる。





ソワッ。





鳥肌が立った。





目を閉じた野本くんが



迫って来て



唇と唇が重なる。





ゾクッ。





悪寒が走った。





しっとりとした掌が



胸の膨らみを包む。





ゾワッ。





背筋が凍った。






「あっ、ちょ、ちょっと待って」




今すぐ振り払いたい衝動を抑えて



そっと野本くんから離れた。




「どうしたの?」




「ちょっとトイレに行ってくる」




慌ててベッドから抜け出して




個室に入って座り込んだ。











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