71.Sな彼女とNな彼

狭い部屋に大きなクィーンベッド。



テレビの黒い画面に



うっすらと二人の姿が反射する。





安いラブホテルの一室。





「先にシャワー浴びるね」





野本くんがバスルームへと消えた。





どうしよう。





恋人同士ってこういう時



どういう風に過ごしてたんだっけ。






ふと西川さんの顔が浮かぶ。




今どこで何をしてるのか



私は何も知らない。




実家暮らしって言ってたけど



帰省先はやっぱり関西なのかな。




地元にいた時からずっと



周りには女の子がいたんだろうな。




私じゃなくても、私じゃない方が



彼にはふさわしい相手が



いるに決まってる。






私には野本くんと積み重ねて



乗り越えてきた長い歴史が



あるんだから。






バスローブを身にまとった野本くんが



「あっちぃ」と言いながら



冷蔵庫のミネラルウォーターを



一気飲みした。





前に会った時よりも



お腹が出てるような気がするけど。





タオルで髪を拭いている野本くんが



「ドライヤーどこ?」と言いながら



殆ど乾いている前髪を



一気にかき上げた。





前に会った時よりも



おでこが広くなったような気がするけど。






「私もシャワー浴びてくるね」






私には野本くんと積み重ねて



乗り越えていく歴史が



あるんだよ。











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