68.Sな彼女とNな彼

私が同期の舞とランチを済ませて戻ると



彼は朔くんの席に座って



パソコンで作業をしていた。





「マミヤちゃん、おかえり」




「そこは朔くんの席ですよ」




ため息がこぼれた。




「朔は外出中。松川課長には許可を得てるから」




「抜かりないですね」




「当たり前やろ。大体先に座ってたんは俺やし」




「イス取りゲームじゃないんですから(笑)」





彼は二台並べた画面に見入ったまま


こちらを向こうともしない。




少しホッとして私は午前中の会議資料を


まとめていた。





しばらくして「あかん」と彼は呟いた。




「何か問題でも?」




私は見てもわからない画面を覗く。




「問題ないよ。問題ないのが問題やねん」




急に振り向くから、至近距離で目が合った。




お互いに照れ笑いを浮かべた瞬間



私は背後からの威圧感を感じた。




「えっと、どういう事象かご説明クダサイ」




努めて冷静に聞く。




「何やねん、その喋り方(笑)」




「イイカラ、お願いします」




彼は笑いながら、パソコンの画面を切り替えた。




「俺の計画では七月末までにココまで作業する予定やったんやけど、チェックも既に完了してん」




スケジュール表には


仕事が一ヶ月近く早く終わった印が


刻まれていた。




「早く終わったなら良かったんじゃないですか?」




「んなわけないやろ。仕事がなかったら、俺はここには来られへんやん」




「そんなにうちの会社が好きなんですか?」




綺麗な女の子がいっぱいいますもんね、と


嫌味を言ってやろうと思ったのに。




「マミヤちゃんがおるからな」




彼は私の目を見て言う。




ドクンと胸が鳴って


また体温が上がる。




「とりあえず新しい計画を組み直すから、マミヤちゃんは松川グループ全員の予定出して」




「あっ、はい」




「ここやとアレやから、ミーティングルーム空いてへん?」




「調べます」




社内のネットワークで


各部屋の利用状況を検索する。




「ROOM3が終日空いてるから予約入れますね」




「ありがとう。ほな、俺は先に行ってるから」





私も慌てて準備をする。




さっきから見られてる気がして



気持ちが落ち着かない。




プリントアウトした資料を抱えて



彼の元へ向かった。











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