66.Sな彼女とNな彼

翌日。





今何時……?




枕元の携帯を探る。




どこだ……?




ベッド脇に置きっぱなしの


バッグが震えていた。




手を突っ込んで探る。




通話ボタンに触れたみたいで


中から「もしもし」と声が聞こえた。




あ、あった。




耳に当てて「はい」と応じる。




「マミヤちゃん、大丈夫か?」




「大丈夫ですけど?」




いつもより早口な西川さんの声。




「まったく。昨日から何回掛けてると思ってんねん」




「すみません、寝てて……」




「いくら何でも寝すぎやろ(笑)」




むくりと起き上がって壁の時計を見る。




『5:00』




ごじ?!




「まだ五時じゃないですか。西川さんこそ早すぎでしょ」




「いつまで寝ぼけてんねん(笑)。もう夕方や(笑)」




夕方?




「えっ、夕方の五時?!」




ベッドから飛び出して窓を開けた。



道は西日に照らされている。




「マミヤちゃんはオンオフの差がすごいな(笑)」




「すみません……」




とことん恥ばかりを晒している。




「昨日はヤリ逃げしたまま放置プレイするしやな」




「ヤリ逃げって……」




昨夜の色々が蘇ってきて


全身から火が噴き出す。




手がじわりと汗ばむ。




「おかげで俺は仕事が手につかへんやろ」




「えっ」




「どうしてくれんねん」




「ふふっ、サプライズ成功ですね」




「そうやな」







この時には彼氏の野本くんのことは



私の中から消えていた。




「また明日」と電話を切ってからも



西川さんのことだけで頭がいっぱいで



恋が始まる前の甘さに溺れていた。




期間限定の特別な幸せ。







そして



願い続けていたことは



忘れた頃に叶う。











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