65.Sな彼女とNな彼

「勝負ごとには強いんやで」




ニッと笑って彼が振り返った。




「……ですね」




見事にゴールを決めたキメ顔を



直視できない。





さっきは大ハズレだったくせに。




ううん。違う。




今度は入るって思ってた。






「俺は準備万端やけど?」




ニヤニヤしながら彼が両手を広げた。




軽いノリでならキスくらい



簡単にできると思ったのに。




「自分で仕掛けたんやろ?」




いざとなると体が動かない。






彼がふっと笑って私の頭を撫でた。




「Aren't you gonna kiss me ?」




風の音と英語のフレーズがすり抜ける。




「ど、どういう意味ですか」




「俺を外国人と思えばええなって思って(笑)」




さっきの話を思い出して笑いが込み上げた。




「だから無理です(笑)」




「知ってる(笑)。ほな、今日は帰ろっか」






私の手を引いて彼は歩き始めた。






車の中で「ごめんなさい」と謝ると



「いつかそれ以上のこともさせるから別にええよ」



と優しさにやらしさを乗せて笑った。






家の前で「ありがとうございました」と伝えると



「いつか一緒の場所に帰れたらええな」



と冗談か本気かわからないことを言った。






「じゃあ、もう入りますね」




「うん、おやすみ」




軽く右手を上げた彼の頬に




ちゅっ




触れるだけのキスをした。





「おっ、おやすみなさいっ!」




もう彼の方は見れなくて



慌てて扉の中に逃げ込んだ。





バタンッ!





勢いよく閉めた音に反応して



リビングから「実結~?帰ったの~?」と



母の声がした。





「うん、ただいまっ」




階段を駆け上がって部屋に入って



特大あおすけを抱きしめる。




胸の高鳴りが収まらない。




さっきから携帯も震えているけれど



バッグに触ることすらできない。





今夜はこのまま甘い幸せに眠りたい。











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