59.Sな彼女とNな彼

彼がふっと笑う。




「な、何がおかしいんですか?」




深く座り直して


手を離そうとすると


ぎゅうっと力が込められた。




「今はええやんか」




「でも……」




「暗くて怖くて危ないやろ?」




「危ないなんて言ってません」




手が触れ合った時から


暗くて怖いことも吹き飛んでいた。




「ここで俺に置いていかれたらマミヤちゃん帰られへんやろ?黙って俺の言うこと聞いて」




「脅しですか?」




「ほんまに嫌がることはせーへんやん。嫌ならハッキリ嫌って言ってみ?」




彼が空いてる手で私の頭を撫でて



ふいに引き寄せた。



バランスを崩して彼に寄りかかり



肩に頭を乗せる形になった。




「あ、ごめんなさ……」




反射的に身を起こそうとする私の頭を



彼が優しく押さえた。




「はい、じっとして」




じっ……?




「な、何で?」




「ええから。はい、体の力抜いて」




「む、無理ですよ」




カップルみたいに密着したままで


心臓は激しく鳴りっぱなし


触れ合う部分ぜんぶ緊張していた。




「ほな、リラックスできる魔法をかけてみよっか」




「へっ?」




ほどいた手が肩に回された。




キス




されると思って



ビクッと体が震えた。










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