45.Sな彼女とNな彼

六月一日。




例年より遅い新人の配属発表があった。




「うちのグループに配属になった笹下朔くんだよ」




課長に連れられて


爽やかな男の子がやって来た。




「さっ、笹下です! よろしくお願いします!!」




他のグループにも聞こえる大きな声で


挨拶をした。




新卒の子は初々しい。




「席は間宮さんの隣ね。で、向かいの人が派遣社員の足立さん。もう一つは休職中の室戸くんの席」




「はいっ!」




課長が指差しながら紹介する。





そして


一通りグループ内のルールを話した後


苦笑しながら聞いた。




「笹下って噛みそうだから、朔って呼んでいい?(笑)」




「あ、どうぞ!」




「じゃ、朔は先に間宮さんにロッカーの場所を教えてもらって」




聞いてないよ……。




「はい!」という元気な返事を聞きながら


壁際に並ぶ男性用ロッカーの場所まで


案内した。




「笹下、笹下……」




ロッカーの名前を確認しながら探す。




「ないね~。笹下くんのはまだ用意されてないのかも」




「そうですか」




「後で総務に聞いてくるね。ロッカーにはジャケットとバッグを入れて、貴重品は必ず手元にね。携帯もデスクに置いてていいよ」




「わかりました」




「それから、私も笹下って呼びにくいから朔くんって呼んでいいかな(笑)」




「もちろんです!」





席に戻って


企画部の仕事のことを話して


早速会議にも参加してもらった。




朔くんは物分かりが良くて


初めての議事録作成も


私よりも上手く出来ていた。




この子は即戦力になる……!




嬉しくて指導にも熱が入る。




「詰め込み過ぎても覚えられないよ(笑)」


と、課長から止められるほどだった。




仕事は順調にいきそうな気がして


気分は上がっていた。




野本くんとはまた連絡はつかないまま


会いに行くと決めた週末が近付く。




メールや電話の返事がなくても


行くだけ行くと決めた。




夜行バスの予約も取ってある。




金曜日の朝。




『今晩の夜行バスでそっちに向かうね』と


メールを入れた。




仕事が終わっても、家に着いても


返事はなかった。




それでも


泊まる準備をして深夜に家を出た。









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