31.Sな彼女とNな彼

ため息しか出ない月曜日。




痛みは取れているのに


足取りは重い。




忙しいだけって何?




野本くんとは一緒になれると


ずっと思ってたけど


もう駄目なのかな。




会いに行くのも


電話もメールも


迷惑なら迷惑と


ハッキリ言って欲しいのに。





はああ……。





会社に着くと


課長はとてもご機嫌だった。




「間宮さ~ん、新人のレポートすっごく良かったよ」




「ありがとうございます。でも、あれは西川さんが作ったんで私じゃないです」




「そうなんだ。さすがだね~」




彼の名前を口にしただけで


動悸がしてしまう。




「そうですね。そんな事より先月末締切のお客さまアンケートの抽選しますけど、私が引いてもいいですか?」




約15,000枚の応募ハガキの中から


5名に豪華商品が当たる。




「いいけど、先にアンケート結果の入力が済んでからね」




「えっ? これまだ未入力分ですか?!」




ずっしり重い段ボール二箱分。




「そうそう。隣のグループの北山さんに入力の仕方を教わりながら手分けしてやってね」




「はーい」





北山さんに声を掛けて


自席から離れたスペースで


半分ずつ入力する事になった。




「評価欄の5段階は数字で、感想は良い普通悪いで分けてね。良いものはいいんだけど、クレームっぽいのは必ず私に教えて」




北山さんの説明をメモしながら


パソコンの入力方法を教わった。




一通りの説明が終わると


入力を始めた私を北山さんが


じっと見つめている。




「私の顔に何かついてます?」




「ううん。間宮さん、先週の金曜日、王子と一緒に仕事してたよねえ?」




体がピクッと震えたのが


バレてませんように。




「王子って西川さんですよね? 定時後少しだけ一緒でしたよ」




「その後は一緒にご飯、とか?」




な、何?


北山さんも西川さんと恋仲なの?!




「いいえ。仕事が終わったら真っ直ぐ帰りましたよ」




「誘われなかったの?」




「社交辞令として夕飯どう?とは聞かれましたけど、断りました」




「え~、何で断ったの? もったいない」




「私はチャラい人は苦手なんで、西川さんは無理です」




ほぼ初対面でキ、キスまでするような


軽い人に振り回されたくない。




「そうなんだ!」




北山さんの声が弾む。




「彼氏もいますから、王子には興味ないです」




自分に言い聞かせてるみたい。




宣言して気持ちを固めたかった。




私は西川さんを好きにはならない。




なりたくなかった。










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