26.Sな彼女とNな彼

「遅くなってごめんなさい!」




先に私の席の隣で作業をしている彼に


両手を合わせて謝る。




取り囲まれていた私を


笑って見ていた彼が


また同じように笑う。




「まあ、しゃあないな。とりあえずデータ入力は終わらせたから、入力チェックしといて」




私にプリントアウトした紙を渡して


彼は席を立った。




「どこ行くんですか?」




「ちょっとコーヒー入れてくる」




「それなら私が……」




「マミヤちゃんがデータチェックしてる間は俺待たなあかんから」




本来は私が先に入力すべきだった。




「はい、すみません……」




迷わず給湯室に向かう彼は


昨日も自分でコーヒーを入れたのかな。



茶色い髪も明るい藍色のスーツも


キラキラして見える。




見惚れてる場合じゃないや。




彼の入力したデータと解答用紙を


比べながらチェックをしていく。




ミスなんて一つもない。




完璧じゃない。




見た目以上に仕草や振舞い、


どれもが魅力的で……困る。





コーヒーの香りがして


彼が戻ってきた。




「はい、マミヤちゃん」




来客用の紙コップに


コーヒー……と、ミルクティー。




「二杯も飲むんですか?」




「なんでやねん(笑)。お腹チャプチャプなるやろ」




「そうですね(笑)」




すっとミルクティーを私のデスクに置く。




「これはマミヤちゃんのやから、チェック終わったら少し休憩しとき」




「えっ? いや、結構です。西川さんを働かせて休むわけにはいかないです」




「俺は研修で他のオッサンが喋ってる時は休憩してたから」




きっと何を言っても休まされるから


私はもう口答えを諦めた。




「ありがとうございます。よく私がコーヒー苦手って分かりましたね」




「何となく。昨日めっちゃ幸せそうな顔でコンビニのミルクティー飲んでたから(笑)」




「へっ?!」




いつ見られてたんだろう?!




恥ずかしくて顔が熱い。




彼の視線を近くに感じながら


書類を見ても集中できない。




「あのっ、見られてると気になっちゃうんですけど」




私が言うと彼はコーヒーを置いた。




「あはは。ごめんな。じゃあ、俺は終わった分からまとめよかな」





コーヒーは殆ど減ってなくて


私のために飲み物を入れてくれたんだと


気が付いたのは、仕事が全部


片付いた後。










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