11.Sな彼女とNな彼

信じないって


言ってやろうと思った。




なのに


彼の目を見ると


嘘が見透かされそうで


バカ正直に答えた。




「誰かを好きになるのに時間は関係ないと思います」




「そうやんな」




チョコを口に放り込んだ彼が


満足そうに微笑む。




そして


私の目を覗き込んだ。




「ほんなら、俺がマミヤちゃんに一目惚れしたって言ったら信じる?」




……はい?




この人何言ってんの。




「信じません」




「即答か(笑)。なんでやねん」




「何でって……」




誰にでも同じこと言って


口説きまくってんじゃないの?!




喉元まで上がってきた言葉を


飲み込んだ。




「信じられないものは信じないからです」




「信じなくても信じられなくても俺はマミヤちゃんに会った瞬間に魂が痺れてん」




胸を押さえる彼。




「……心筋梗塞の前触れじゃないですか? 病院に行った方がいいと思いますけど」




「つれないなあ(笑)」




「私はチャラい人と軽い人は苦手なんで」




「俺のどこがチャラいねん」




「見た目と中身です。噂も聞きましたよ」




「けんもほろろやなあ(笑)」




「そういうわけで聞かなかったことにします」




冷たく言い放った。




彼が黙ったから


もう終わりなんだと思って


ホッとした。





「……信じられへんかもしれんけど」




「えっ?」




「俺は本気やから」




真剣な目で言うから




返す言葉が見つからない。




「でも……」




「何か分からんけど、好きやなって。逃がしたらあかんって思うねん」




心臓が激しく拍動して




呼吸さえ出来ないほど




胸が苦しい。





優しい風が吹く。





どうして私は




この人に見つめられると




泣きたくなるんだろう。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る