10.Sな彼女とNな彼

コンビニでミルクティーと


サンドイッチとM×Mチョコを


買った。




空腹と疲労に耐えかねて


チョコをすぐに開封。




一粒を口に入れて


元来た道を戻る。




駐車場の通用口まで来て


ドアノブを回した。




上手く回らずに


カチャッと音がするだけ。




力を入れて


何度も回すが、回らない。




開かない~!




どうしよう! どうしよう!




必死でカチャカチャしていると


急にドアノブが回って


中からゆっくりとドアが開いた。




「この扉、オートロックやから(笑)」




外からは鍵がないと開かない、と


彼が笑いながら


私を招き入れた。




「そうなんですか。ありがとうございましたっ」




恥ずかしいやら何やらで


早足で建物の通用口へと歩いた。




「あっ!」と彼が言う。




無視してドアを開ける。




ところが、開かない。




カチャカチャカチャ……。




デジャヴ……!




「まさか……」




「うん。そこもオートロック(笑)。今助けを呼んでるから、ちょっと待ってな」




コンビニに行く時に


北山さんはそんな事は


教えてくれなかったよ~。




「もしかして西川さんも戻れなくなったんですか?」




「うん(笑)。さすが新しいビルはセキュリティがしっかりしてるよな(笑)」




沈黙が流れる。




穏やかな風の音がする。




彼との間にある沈黙は


嫌じゃなかった。




「そうだ。チョコ食べますか?」




コンビニの袋から


開封済みのM×Mチョコを出して


軽く振った。




「貰おうかな」と彼が左手を広げた。



その手に丸い小さなチョコを


何粒か乗せようとして


バラバラと大量に中身が出た。




「あぁっ」




彼が慌てて両手で受け止める。




セ、セーフ……!




「こんないらんわ(笑)」




「ですよね(笑)。じっとしてて下さいね」




余分なチョコを箱に戻す。




手が触れると


ドキドキしてしまう。




チョコのザラザラという音が


小さく響いていた。




「なあ、マミヤちゃん……」




「はい?」




彼が手のひらの数粒を握りしめた。




「一目惚れって信じる?」










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る