76.Sな彼女とドSな彼

帰りの電車は死ねるほど混雑していた。




サヤカが奥の扉に背を向けて立つから


窓に片手をつくと向き合う形になった。




「だだ込みやな……」



ぎゅうぎゅうの車内に


さらに人が乗り込んでくる。



体が密着する。




向かい合わせは……やばい。




身長差がそんなにないせいで


顔の真横にサヤカの顔がある。




サヤカの心臓がバクバクしているのが


伝わってくるくらいに


ピッタリくっつき合う。




そんなに緊張されると


俺までめっちゃ恥ずかしい。




顔が見えなくて良かった。




車内は花火の高揚感からか


お喋りしている人が多かった。




「俺な、基本的に車しか乗らんやん?」



耳元で小声で話す。



「はあ」



サヤカが間抜けな返事をする。



「通勤ラッシュとか経験ないねん」



「私もないです」



「これはヤバイな……」



「ねえ。かばん持たなくても落ちない感じですね……」




「せやなくて」




反対の手でサヤカの腰に手を回した。




「や、ちょ、ちょっと……」




「この状況で理性を保てって言われたら自信ないわ。痴漢のオッサンの気持ちの方がめっちゃ理解できるんやけど」




どうにかしてしまいたいと


ちょっとだけ本気で思った。




ちょっとだけやで?(笑)









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