69.Sな彼女とドSな彼

花火大会当日。




太陽が眩しすぎる。




徹夜明けの人間にはきっつい……。





午後3時。




サヤカが土手の原っぱの上に


レジャーシートを敷いた。





意識が朦朧とする。



しかも



仕事が終わらずノーパソ持参。





サヤカが呆れて言う。




「そこまでして花火見たいんですか?」




今年の花火大会はこれが最後やねん。




「ん〜、もうすぐ終わるー……」




ブルッと頭を振って睡魔を飛ばす。




「じゃ、留守番してて下さいね。私は食料調達してきますんで」




さすが気が利く。




食べもんに関しては。




「おー、ありがとー。俺の財布持ってって」




取り出した財布は受け取らなかった。




「いいです。奢りますから頑張って下さい」






蒸し暑い。




二〜三十分ほどでサヤカが


両手いっぱいに食料を持って


帰ってきた。




どんだけ食うねん!




はよ仕事終わらせよ……と


ノーパソと睨めっこしてる横で


サヤカが遠慮なく缶ビールを開ける。




ビール……!




「一口くれ」




我慢できん。




「西川さんは車でしょ。駄目ですよ」




「一口なら帰るまでには抜けるやろ」




「そっか。でも一口だけですよ?」




俺の一口を舐めんなよ。




と、言いたいとこやけど


半分ほどでやめといた。




飲酒運転するわけにはいかんしね。




「よっしゃ!」と気合いを入れ直して


ノーパソと格闘する。





ふいにサヤカが横から焼きそばを


俺の口に入れる。




黙ってモグモグと食べる。




続いてたこ焼きも放り込まれる。




たこ焼きを飲み込む。




「よしっ! 何もなければとりあえず終了やわ。はー、やっと終わった〜」




大きく伸びをした。




「はい、あーん」




え?




ほぼ条件反射で口を開けると


たこ焼きを入れられる。




「美味しいですか?」




「う、うん。旨いけど……」




あーん、って……。




「もう西川さんはビールは駄目ですよ。お茶にして下さいね」




渡されたお茶を半分くらい一気に飲む。




「トイレ行きたくなりますよ。あ、仮設トイレは屋台の向こうにありますけど」




「サーヤはさぁ……」




誰にでもそういう事すんの?




なんて聞くのも恥ずかしいわ。




「はい?」




この鈍感娘が。



間抜けな返事しやがって。




頭にボケの花が咲き乱れてんねん。




「ううん。何でもない。ありがとう」




聞きたい事も聞かれへん俺も大概やな。




まあいっか。




花火が上がるんは



夜になってからやからな。










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