70.Sな彼女とドSな彼
「あかーん。終わらーん」
得意先に完了メールを送ると
添付ファイルが開けないから始まり
DL出来ない、実行できない、と
電話が何度も入る。
寝転がってノーパソをいじる。
まさか向こうも俺が花火大会の会場で
仕事してるなんて思うまい。
「大変ですねぇ」
缶ビール片手におつまみを食べるサヤカが
気の毒そうに言う。
「ほんま、ごめんなー……」
早くから呼び出して放置プレイ。
これじゃ会社にいるのと変わらん。
「ああ、全然。一人でビール飲んで食べてる時は幸せなんで」
大体もう何本飲んでんねん。
「オッサンか」
日が暮れる。
風は少し冷たくて
火照る体には心地良かった。
仕事が片付いたのは
一発目の花火があがる少し前。
"仕事は終わりや"と思いながら
携帯の電源を落とす。
ヒュ〜、ドドーーーン!!!
大輪の花が夜空に咲く。
「間に合って良かったですね!」
「ギリギリやったけどな」
ドンッ、ドンッ、ドンッーーー
仰向けに寝転がったまま
次々あがる花火を見上げていた。
「キレーですねっ」
ノーテンキに言うサヤカの言葉が
花火の音にかき消される。
キレーやな……。
夜空に映し出される光と
体に響く爆発音が
心を空っぽにする。
花火が散って
一瞬あたりが静寂を取り戻す。
暗い空を眺めていると
サーヤの笑った顔が浮かぶ。
その笑顔を独り占めしたいんやけど
ええよな?
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