56.Sな彼女とドSな彼

「よっしゃー! 帰るで!!」




大量の土産を車のトランクに詰め込んで


パンパンと両手で顔をはたく。




楽しい時間はあっという間に過ぎる。




というか


誰かさんが食い過ぎ。





「あ、はい」




サヤカも満腹お疲れモード。




「寝たかったら寝ててええからな?」




ハンドルを軽く握って


助手席に座るサヤカに言う。




「西川さんが静かにしてくれたらね」




「俺の美声を何やと思ってんねん」




失礼やな。




あんまり派手な曲やと寝られへんから


BGMにバラードをかけた。




静かに口ずさみながら


車を走らせる。





黙りこくってるから


寝ていると思ってたサヤカが


突然ペットボトルのお茶を飲んだ。




「サーヤ、眠くないんか?」




「あ、いえ。西川さんこそ大丈夫ですか?」




「俺は慣れてるからなあ。ほんまに俺のことは気にせんでええんやで?」




サーヤはふてぶてしそうに見えて


意外と周りに気を遣うタイプやからなあ。




「大丈夫です」






高速道路に入る。




タイヤが単調なリズムを刻みながら


夜へのカウントダウンを始めた。




夕焼けが闇に包まれて行く。




こんな日をもっと過ごせたら


毎日笑っていられるよな。





サーヤはどう?





「また遊びに行こうな。二人でおったら何倍も楽しいと思うねん」





ふなっきーや元旦那よりも


楽しい時間をあげるから。





「せやから、これからも……」





「…………」





ふと横を見ると


サヤカは口を開けて爆睡していた。





大事な場面やろ!





まあええわ。





そういう飾らない姿に



勇気をもらい続けてきたんやから。









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