43.Sな彼女とドSな彼

とにもかくにも


中途半端に目覚めた欲望のせいで


心も体も温もりを欲した。




男女の営みなどスポーツと一緒。


平気な顔して言い切る芹香を呼ぶ。




まるでハイエナみたいに


男を骨の髄まで食い尽くしてくれる。





「西川さんから呼び出されるなんて何年振りかしら」



「彼女と付き合う前やから三年振りくらい?」



次の現場近辺のホテルのバーで


強めのカクテルを飲む。



「別れたって本当?」



「嘘ついてどうすんねん(笑)」



ほろ酔い程度だと


酔うと大胆になる実結ばかりが


きっと思い出されてしまうから


飲むなら潰れてしまいたい。



「落ち込んでる様子がないから」



だいぶ落ち込んだけど。



でも


実結が違う男と結婚したと聞いて


未練もへったくれも消え去った。



「落ち込んでる暇も芹香に会う暇もないくらい忙しかったからな」



「またまた〜。新しい可愛い彼女でも出来たんじゃないの?」



「だからあいつとはそういうんじゃないんやって……」



「ふーん」



イイ女風の芹香がニヤニヤ笑う。



「何やねん」



「"あいつ"の事が好きなんだ(笑)。西川さんって意外とわかりやすいね」



「だからー……」



「妬けちゃうなあ」



「ちゃうんやって」



「それならその子が他の人に取られても別に構わないんだ」



「取られるも何も俺のもんでも何でもないからやな……」



「いいなあ。私も西川さんに愛されたいな」



「後で愛してあげるやん♪」



「そういうアイじゃないよ」



「ほな要らん?」



「いる♡」




芹香は可愛らしいと思うけど


恋愛対象ではない。




「……彼氏はええの?」



「野暮なこと聞かないでよ(笑)」



相手がいようがいまいが


節操ないからね。



「逆に彼氏が浮気してたらどうすんの?」



「それは嫌に決まってるでしょ」



「無茶苦茶やな」



「気持ちに嘘はつけないから。私は私の気持ちに素直なだけ」





自分の気持ちとやらが



俺にはよくわからん……。





キツいカクテルを飲み続けても


結局は酔えなかった。




芹香と体を重ねても


満たされない感覚でいっぱいで


ほんまにハイエナに喰われてる気分だった。














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