第一部 エピローグ

『ディオリッシモ』



大きな緑に覆われて


凛と咲く小さい白い花。



ほのかな甘い香りの中に


君の影を見る。




意地っ張りで強がりなのは


弱い自分を隠すため。



素直じゃなくて嘘つきなのは


弱い相手を守るため。




そんな君を守る葉になれなくて


違う誰かに摘まれていくのを


止める強さも持てなかった。





小さな幸せを見つけて笑う君に


俺は大きな幸せを貰ってたんだ。




誰かの前でも笑っていて。




人前で泣くのが苦手な君が


俺の前では泣いてばかりいたね。




誰かの前でもちゃんと泣いて。




感情を押し殺して震える君を


俺の胸で安堵の眠りにつかせた。




誰かの腕に抱かれて眠って。





だけど



俺を思って恋した瞳も



愛し合って流した涙も



照れて笑う桃色の頬も



他の誰かに見せないで。






愛しい君が



初夏の風に揺られながら



幸せを運ぶ香りを放ち



ずっと変わらぬ美しさで



咲き誇っていられますように










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る