23.Sな彼女とドSな彼

「何で今日は指輪してないん?」




実結の左手の薬指を撫でる。




カフェに入った時に気付いた。




「ごめん。忘れちゃった」




実結が指輪を忘れて来るのは


別に初めての事ではなかった。






「ほな、今日は代わりにコレ着けてて」




指輪とお揃いの小さな誕生石の入った


四葉のクローバーのネックレス。




たまたま露店で見掛けた。




「へっ?! 何で……?」




「誕生日にはちょっと早いけどな」




四葉のクローバーが見つからなくて


あまりにも落ち込んでるのを見て


そこで急いで買ってきた。




「ありがとう……。貰っとくね」




「ちょうど良かったな。"CLOVER"の中には"LOVE"が入ってるんやって。店員に売り込まれたわ(笑)」




カフェで彼女が待ってるって言うてんのに


無駄にウンチクを語られた。


花言葉は『Be mine.』やって。


どうでもええわ。




「何乗せられてんのよ……(笑)」





細い首に四葉のクローバーを揺らしながら


実結はアイスティーを飲み終えた。





「さてっと。買い物でも行く? 何か見たいもんがあるんやったら……」




「ううん。ホテル行かない?」




「ええけど……。こんな明るい時間から大胆発言やな。こないだは最後まで出来んかったから夜まで待たれへんの?」




「……紀樹のバカ」




少し赤くなった顔にいつものように


照れ笑いを浮かべて視線を逸らすから


図星なんやと思ってた。




不意打ちのキスも


突然の誘惑も


おかしいって今なら分かるのに。




実結の演技が上手かったのか


俺の目が節穴やったのか。




きっとその両方やな。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る