第4話 変人の巣窟へ その1
大学とは小学校、中学校、高等学校と12年間の特別教育を修了した者、或いはそれと同等以上の学力を有する者が更なる専門的な高等教育を自ら欲して勉学に励む場所である。
それは其処に入る以前の所謂、義務的な『教育機関』ではなく、あくまで自らが欲し探求したいと思う者たちの為の『研究機関』と言っても過言では無いだろうか。
その様な学生の自主性が重視される大学生活は世間一般から『自由』と認識されがちである。そしてその『自由』は拡大解釈され、所謂大学の『テーマパーク化』が近年問題視されており、我が学び舎も例外無くそれに当てはまるだろう。
「なあ。何処行くんだ?」
「部活棟だけど?」
俺の質問に鮫島は素っ気なく答える。
今は丁度、2限と3限の間の休み時間が始まったばかりで、お昼時という事もあり、構内では友人と共にベンチや芝生の上などで昼食を取っている人が多い。
鮫島はと言うと、今さっき大学に来たようで眠そうに欠伸をしている。
「あのさー」
「何?」
俺は先程から違和感を感じていた。と言うのも通りすがる人々が矢鱈に此方に視線を向けて来るのだ。
「やっぱいいわ」
「何だよ!?」
その違和感と言うのは鮫島が原因なのだ。
「いや……その服どうにか何ないの?」
「これ?」
そう言って鮫島は立ち止まり、一度自分の服装を確認した。
「別に変じゃないけど?」
あっけらかんとそう述べた鮫島は再び歩き始めた。然し、どう見ても彼の服装は可笑しいのだ。
何故なら鮫島の服装は有名なアニメキャラクターの着ぐるみパジャマなのだ。鮫島は、全身黄色のその格好に鰐のロゴが有名なサンダルを履いて堂々と構内を徘徊しているのだ。
確かに、全身ジャージで講義を受ける人も偶に見かけるし、服装の指定がある訳では無いので誰が何を着ていようと構わないのである。
だが、物には限度と言うものがある。これだけ周囲の視線を集めているのだ。これを「変じゃない」と言える彼は最早救いようの無い人種だという事は言うまでもない。
「まあ、お前がいいなら別にいいんだけどな」
俺は独り言の様に呟いて、鮫島の後を追った。
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