第10話 敗北しても

「天野さん、対戦はどうだった?」

「あ、私は負けちゃった。でも、楽しかったよ」

「惜しかったね。でも、楽しんでもらえてよかったよ」

「それにね、私と戦った子が向こうにいるあの子なんだけど

すごく強かったよ」


天野さんの指差した先にいたのは小学生の子だった。


「小学生の子だよね」

「うん、そうなんだけど初心者の私でもこの子は強いって感じたんだ」

「そうなんだ」


そろそろ2回戦がはじまります。

参加者の皆さんは呼ばれた席に座ってください。


「マモルくん、二回戦頑張ってね」

「うん、頑張るよ」


僕は呼ばれた場所の席に座る。

僕の席の前にいたのは天野さんと戦った小学生の子だった。


「あの、対戦よろしくお願いします」

「あ、僕の方こそよろしくお願いします」


対戦する前から強さを感じる。その雰囲気から。謙虚な姿勢。

落ち着いた態度。小学生だけど、この世界ではとても小学生の子とは

思えないくらいの気迫を感じた。


では試合を始めてください。


僕のターンから始まる。

僕の手札はいい手札だった。

これならさっきの試合のように落ち着いて戦えば勝てる。

僕はそう思っていた。


「では、俺のターンですね」


1ターン目はお互い互角だった。

次の僕のターンもいつも通りのプレイングができていたんだ。


「では俺のターンですね。俺はエナジーカードを使いこのカードを出します。

効果でデッキからレベル1のこのカードを出します。さらにこのカードの効果で

場の裏のエナジーカードを1枚表にします。さらにエナジーカードを使い

レベル2のこのカードを出します。このカードの効果でTゾーンのカードを

2枚デッキに戻し、デッキからエナジーカードを2枚場に置きます」


「・・・」


この1ターンですごくレベルの差を感じた。

この子は確かに小学生だけど、プレイングは駅前の店のお兄さんたちと比べても

対等だと感じた。


「僕の前です…対戦ありがとうございました」

「俺の方こそ対戦ありがとうございました」


勝負の結果は完敗だった。

とても強かった。でも、すごく面白かった。

僕もあんな風に戦えるようになりたい!

僕は素直にそう思えた。


「マモルくん、惜しかったね。でも、いい試合だったよ」

「うん、完敗だったよ。あの子強かったね」


その大会はその子が優勝した。

今思うと他の参加者と比べると強さは飛び抜けていた。

カードの世界の奥深さ。

僕はこの大会を通じてそれを強く実感できたんだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る