第9話 初めての勝利

「僕のターンからいきます」


対戦が始まる。

同じカードの大会なのに駅前のカードショップとは違うところがあった。

それは試合が始まった時の場の雰囲気だ。

駅前のカードショップでは対戦が始まると同時にショップ内全体の雰囲気が

勝負の世界になるんだ。

プレッシャーとその場の緊張感はおそらく大会に参加したのみ分かる世界

だと思う。


「ドロー」


相手のターンが始まる。

相手は僕と同じ中学生だ。

僕は相手の動きをじっくり伺う。


「このカードで攻撃です」

「パワー+5000とパワー×2のサポートカードで防ぎます」


対戦を進めていくうちに思ったのは駅前のカードショップとは違って

その場の緊張感や切迫感が全然違って、駅前のカードショップより

気持ちが楽だった。


対戦は僕の有利に進んでいる。

僕はこの人と戦っていると、まるで始めて大会に参加した時の自分と

対戦してるように感じた。


「これで攻撃です」

「くぅ…。参りました…」

「ふぅ…。対戦ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」


初めての一勝だった。

全身の力が一気に抜ける。

対戦内容は大きく戦況が傾くことは無かった。

でも、最後まで気が抜かなかった。

その勝利を得た瞬間、安心、喜び、達成感。


リョウくんが初めて一勝した時のあのすごく喜んでいた姿。

僕もようやくそれを体感的に知ることができたんだ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る