第3話 企業説明会2

 企業説明会というのは、ネームバリューで人気に絶大の差を誇っていた。

 ここは広島であるが、一番人気は広島銀行、オタフクソース等、地元で就職できれば安定間違いなしといったところであろうか。そういう場所にはこぞって学生が群がる。企業側もふるいにかけるかの如く説明を始める。立場的には、学生より企業側が上で、「バカな学生は取りません。優秀な人材のみ求めてます」という感じだ。

 また逆も然りで、転勤の多いスーパー系列、運送業、無明の町工場等は学生が寄り付かず、ブースにはむさい作業着の男2人が椅子に座ってただ待っている状態も珍しくない。この様なブースは「どんな人材でも構いません!とにかくお話を聞いてください!」状態で、なにかと学生はちやほやされる。

 私が目につけたのはそこで、人が居ないブースを探す。すると、全国チェーンの大手パチンコ店のブースが丁度あったのだった。人事担当だろうか、企業のパンフレットを片手に待っているが、誰もいない。それはそうだ、パチンコ店員など大学受験でいう滑り止めみたいな職場で、この4年次初期の頃にパチンコ店に就職したい!という物好きなどいやしない。

 職場などどこでもいいから早く決めて遊びたいという俺の思惑と、大量の人材を確保していつでも辞めてもらって構わない人間を集める企業側の思惑が一致した奇跡の瞬間だ。

 俺は遊び半分、そのパチンコ屋のブースに入っていくのだった。

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