第7話 深愛③

 そういうわけで、こうして今コインランドリーでどう時間を潰そうか悩んでるわけで。

あとどれくらいだ、と思い乾燥機のドラムに表示されてるカウントタイマーを見ると1分と表示してある。

おお、今日の事を思い出してたら時間があっという間だった


 ピーピーと音が鳴り、乾燥終了を知らせてくれた、腰をあげて乾燥機に向かい同じようにドラムにカバンを入れて彼女の制服や下着を入れてチャックをしまう。

やましいことをしているわけではないのだが、どうも独りの時間が長いと、こう焦りなんてものが生まれたする。

 そのまま出口にむかい傘を手に取りまだ止まない雨をしのぐように。彼女の制服を濡らさないように胸に抱いて急いで家に戻った。


 なんとか濡らさずに帰ってこれた。

鍵穴にカギをさしロックを解除して扉を開けて中に入りリビングへ向かった。

 彼女の姿が見えず、トイレかなと思いながらソファーに向かうと彼女はテレビをつけたまま静かな寝息を立てて寝てる。

 その姿に少しは呆れてしまう。

ランドリーに行く前に言ったはずなんだけどな。

どんだけ無防備なんだろうかと起こすのは忍びなかったので、このままでは風邪をひいてしまうだろうと寝室から大きめのタオルケットを持ってきて上からかけた。




となりで座り、起きるのを珈琲を飲みながら待つこと…。

「ん・・・・んーはぁぅ」

 どうやら彼女は目を覚ましたらしい、彼女は体を起こしタオルケットに気が付いてなぜか鼻に当てて匂いを嗅いでいる。

そのしぐさに年甲斐もなく恥ずかしさがこみあげてきてさすがに止めようと一つ咳払いをした


「・・・オホンっ」

 その咳払いにひるまず匂いを嗅ぎながら、私に視線をやり彼女は少し赤面したのか、紅潮している顔で笑っているようだ。

タオルケットで顔が半分隠れていたが何となく様子がわかることができた。


「先生ありがとう」

 そう一言お礼をいいまた匂いを嗅ぎ始めた。

さすがに恥ずかしくなり取り上げようと手を伸ばすとかわされた。

 仕方ないので彼女の服がはいったカバンを手渡した。

彼女は受け取りカバンを開けてグチャグチャに入れてある制服をみてひと息、嘆息をもらしている。


「先生 たたまずに入れたんですか?皺になってるじゃないですかー」

 口をとがらせて抗議してくる。

気持ちわかるが私の気持ちもわかってほしいのだ。

「私が女性のものをたたんでる姿はさすがに変に思われるだろう 変な噂で職を失いたくない」

 静かに余生を求めているのにそんな噂を立てられても困る。

この状況も困るんだが・・・・

「・・・・まぁ仕方ないですね~」

 どうやら理解してくれたらしい


 ほんとに理解してますか?

いきなり彼女はカバンの中から下着を取り出して、カバンを隣に置きいきなり下着を着用しようとしている。

「ちょ・・・・木下、着替えるならせめて場所を変えてやってくれ」

 慌てて止めようとするがおかまいなし、パンツに片足づついれてそして立ち上がり、くの字身体をおり履きあげていくそれだけならいいんだが…

 ワイシャツが大きいせいと、ノーブラなので襟元から胸が揺れているのが確認できてしまう。

思わず、視線が自然とそれに釘付けになるが、すぐ視線を落とし頭をかきながら注意を促した。

「キミは、男の前ということを忘れないでくれ」

「先生・・・・」

 彼女は困った顔していた。


 その表情に口調がきつくなってたのかと気にしてしまったそんなのは気のせいだと1分もしないうちに打ち砕かれた。

「私は先生の気を引くためならなんでもしますよ?忘れたんですか?」

 あー言ってましたねそんなこと・・・・

色々ありすぎて今日言われたことを忘れてしまってた。

「ここにはキミと私しかいないんだ・・・自重してくれ・・・・」

「だからですよ、先生は学校では問題なるというからこういうことでしかできないじゃないですか」

「キミってやつは・・・」

 その好意に恐怖というのがないのだろうか?

キミに手をだしてもいいと聞こえるぞ。

若さがそうさせているのだろうか?最近の若者は、自分を安売りする傾向でもあるのだろうか。

「先生、先生に処女をあげてもいいですけど 今はだめですよ」

 思わず咳き込んだ・・・・何を言い出した・・・・

「私は先生の隣にいたいんです でも勝手にいる気はないんです ちゃんと認めてもらって隣にいたいんです」

 どこまでも純粋に自分の気持ちを私にぶつけてくる。

私はこの子に諦めてほしいのに、その眩しいくらい強い気持ちに拒否する直接的な言葉を、出せずにいる

「わかったわかった・・・・キミの気持ちは理解しているこの話はやめよう」

 これ以上に浸食されては、私は・・・・


「服も乾いたことだ 送るよ」

「えー泊めてくれないんですか?」

 終わらせる気が全くないですよね?なんですか?

「キミは生徒で私は教師だ・・・・お願いだから私をこれ以上困らせないでくれ」

「困らせます 私がどれだけ先生を想ってきたと思っているんですか?」


 なんだ?


彼女の言葉が、声色が低く、顔つきもきつくなっている

「今年からじゃない 高校に入ってからずっと片思い……私のこの想い……私がどれだけのことをして…こうして先生の傍にいこうとしてるか」

 最後の方は声が小さくなり自分の想いを確認するかのように彼女は呟いていた。

それでも彼女の瞳は私からそらすことなく自分の想いを伝えてくる


「それでもキミの気持ちに応えることはできない」

「そんなことで…私が先生に対する想いを断ち切るわけないってわかっていってるんですか?」

 そうだなと・・・・思う 


――彼女の気持ちを考えていると視界がぼやけていく・・・・


――そんなに私はキミにとって必要な人なのか・・・・


――― あの人たちには必要とされていなかったのにな・・・・




―『産む気はなかったのよ 主人が産んでほしいというから・・・・・・』




―――ワタシハ ヒツヨウ ト サレテイナイ 

―――ウマレテキタ コトサエ マチガイナノニ


目の前が暗くなる


耳に混濁の音が鳴り響く


暗く 冷たい その世界は とても狭く 隔離され 出ることを許されない 


オカアサン ゴメンナサイ



 いつもの激痛が ああ・・・・間接に電気が走る 痛い痛い痛い

身体の中が暴れて一気に逆流が押し寄せてくる


「おええええええええええええええええええ」


―――自分がどこいるのかさえ わからない すべての感覚がマヒしていく


 嘔吐が激しく続く 上下に胃袋が動いてるかのように もしくは胃袋を手のひらでもみほぐされてるかのように 胃のすべてをぶちまけてるのか 喉が焼ける

嗚咽も交じり 呼吸が整えられない 苦しい


「くは・・・・あ・・・・ぁ・・・・うう・・・・」


左腕が痛い・・・・ケガをしていないのに・・・・今傷つけられたかのように痛みが増していく



「あぁ・・・ああ・・・・おえっ・・・ごっほほ・・・・」


私は彼女の存在を忘れて のた打ち回っている


「くあぁ・・・っ・・・うう・・・あっ・・・・」


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 少し落ち着てきたのか・・・視界がぼやける中 私に向かって叫ぶ声が聞こえる

 誰だろう・・・・?お母さん?

 どれくらい時間がったのだろうか・・・・前回よりもひどいなーと思いながら・・・・・



―――意識が遠くなる



「お母さんごめんなさい」

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