第26話 武器のイベント

「パーツ1博多より射出準備完了。ブレイブヴァインへの誤差マイナス3、誤差修正内。到達時間予測六秒」

 「パーツ2鳥取、パーツ3札幌、パーツ4高知も発射準備完了しています。到達時間予測六秒」

 「ブレイブヴァイン頭上一万メートルでの仮想ドッキング問題無し。災厄獣からの危機予測に異常ありません」


 中央司令室のメインスクリーンにはブレイブヴァインの戦闘が映し出されており、その上下左右の隅で日本各地の映像が流れていた。


 平地や森林といった特に何でも無い場所が映し出されていたが、突如その土地達が割れていく。カタパルトが姿を現し、そこに搭載されている“部品達”がブレイブヴァインのいる方向を向いた。


 「リニアレール軌道上異常無し。第一級装備ディスペラードアークいつでも射出可能です」


 今、この地球に兵器というモノは存在していない。


 本来なら国家防衛のため、または威圧や圧力のために兵器は必要なのだが、国家は災厄獣が少数ながらも生存している事を知っていた。そのため、全滅していない災厄獣が攻めてくる事を危惧して今はどの国家も兵器を所有していなかった。


 そう、今の世界は兵器というモノを所持する事ができないのだ。


 兵器を持つ事ができない。


 これはブレイブヴァインの武器にも関係してくる問題だった。


 ブレイブヴァインの武器とは兵器と同義であり、安易に作ってしまうとそこへ災厄獣を招いてしまう可能性が高い。


 だが武器は絶対に必要だ。ブレイブヴァイン自体にはドミネートガンとグランディアブレイクの二種類しか武器がなく、他武器が無ければ災厄獣達に対抗できなくなるのは間違いなかった。


 なので、ロンバルディ社は災厄獣から危機感知されないように武器を“分離状態で管理”していた。


 ブレイブヴァインが必要になった時だけ武器に合体させ、それ以外は“武器でない状態”にして保管しているのだ。


 リスク回避のため部品(パーツ)は全国各地に分散させており、今の日本はさながらブレイブヴァインの武器部品庫のような状態となっている。


 「よし、ディスペラードアーク部品(パーツ)発射!」


 唯の許可と共に博多、鳥取、札幌、高知から武器部品が発射された。


 マッハを超えるスピードで見る見る現地へ近づいていき、数秒でブレイブヴァイン上空一万メートルに到着する。全国から発射された部品が集まり即座に武器へと合体を始め、その姿を形成していった。


 無駄なく滑らかに形成されていくブレイブヴァインの武器は鋭利に尖った巨大なエンブレムだった。


 稲妻のような突起が目立ち、中心のクリミネイトダイアが眼下にいる主をジッと見つめるように煌めいている。


 「ディスペラードアーク!」


 司の武器を呼ぶ声、ブレイブヴァインの遠距離火力兵装は主の装着要請を確認した。


 瞬間、ディスペラードアークは落下を開始。その際、武器全体を燃え上がらせ、それはさながらフェニックスのようだった。

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