第4話 健全は罪である。

 オレたちは朝食を済ませて、ミアと一緒に学校に向かうことにした。舞は、許嫁が用意してくれた車で執事と一緒に先に行ってしまってる。

 残念なことに、乗せてはもらえないというか、もらうわけにはいかないのだ。

 双方に変な噂が出回り、ご迷惑をかけるわけにはいかない。


 今の生活ですら、許嫁からしたら迷惑で、男と一つ屋根の下というのは、気が気でならないのではないかと思う。

 譲歩してくれるのは今住んでいる家が特殊構造であることだ。

 外観からみたら、二つ家が並んでアパートみたいな感じに見える事、もっと遠く、20mくらい離れてみると、無駄に広い庭がオプションとしてある。

「いや~この家(アパート風)に対して、この庭の広さはないと思うんだが」

 この無駄に無駄に広い庭が、許嫁の愛の広さなんだろうな~と思いながら、ミアと一緒に自転車を押しながら、オレたち専用の出口に向かう。

「ひーろーいねー、瑛斗~」

間延びしたような話し方、嫌いじゃないが外観の容姿に伴わないのは、萌えなのか?

「ああ、無駄にな、徹底してるわ~あの許嫁・・・」

 オレたちは正門からは出られない、いつも急用出口で家の真裏からでないといけないわけだ。

 これも、変な噂が立たないように。

 一緒に住んでるのは、執事か使用人とかそんな風に思われるようにという配慮らしい。

 配慮なんて、言葉がでるあたり使用人思想だな。…オレ、雇い主なんだけど・・・・と愚痴がこぼれてしまう。

 家の持ち主が、許嫁というのがいかんなー。どうも肩身を狭くてる。

 家の内装、外装は舞がデザインして、セキュリティ面は許嫁だ。

 内装に関して、二つに分かれてるのはプライベートのみで、共有スペースが設けられるのはごはんを食べるとこだけ。

 そこは舞が食事を持ち運びをしないでいいようにだとか、そんなこと言ってな~。

 セキュリティ面では、お互いのプライベートスペースには電子ロックがあること、週に1回だけオレの部屋だけロックが解除される。

 その時に舞は部屋掃除をしにくる。

 細かくな・・・細かく・・・・ああ・・・思い出してくるだけで泣けてくる。


「ミア・・・お前を今度から愛でさせてくれ」

 ミアの頭を撫でて、自転車にまたがる。

 ミアも嬉しそうに撫でられてニコニコして後ろに腰を下ろす。

「うんうん、いいよ~」

 ああ、かわいい、この純真無垢がいい。ほのぼのする。

 ああ、なんでオレ舞の事好きなんだろと考えてしまうわ・・・

 ほのぼのする気持ちで、自転車をこぎだし、いざ学校へ。

 今日も、いい天気で春日和、残念ながら桜はほぼ散ってしまってる。

 葉桜になりかけて、桜舞う登校とはいかない。

 高校最後の1年で、舞と過ごす最後の年で、非日常生活を締め括る年でもある。


「ひゃ~はやーぃ、はや~ぃ」

オレの腰に手を回してはしゃぐ、(胸が当たる)すごく楽しそうに、(離れた)オレを見ては周りを見る。(あたる)緩い坂を軽くこぎながら、オレもミアと一緒に笑いながら学校を目指す。

「ミア、姿消しておいてくれな~」

ミアは、周りをきょろきょろ、まるで初めて見る景色を楽しむかのように。いつも楽しそうにしている。ここ1年ずっと見ている景色なのにな。

「はぁ~ぃ」

[うちの姿は、瑛斗にしか見えない]

 ミアの目が輝く、クリっとした目が、その中にある綺麗な翡翠のような瞳が金色に変わり、光輝く。

 何かが身体をすり抜ける感触がミアを中心に広がっているような感覚。


         ―*

 最初は【言葉】だけで、事をなす。

 何てことを信じられなかったけど、出会った時にすぐに解消された、彼女自身がセカイを滅ぼして唯一の生き残りだと証明された事で、納得してしまった。


――― 最強にして最弱の終末の姫君エンド・オブ・プリンセス


 なんて厨二感めいた二つ名を付けている。オレの中で。

 そんな危険な存在も故意にセカイを滅ぼしたわけではないらしいから、こうして、一緒の学校に行ってるわけだが。

 一緒に登校するつもりもなければ、学校に行かせる気もなかったんだけど、【言葉】で無理に連れ出されて、一緒に授業を受けるなんてことをしていた。

 まぁ誰もミアには気づいていなかったんだけど。

 オレの所属する組織に頼んで、彼女に人権を与えて、このセカイの住人してもらい学校の書類を偽造してもらい、転入という形で今に至る。

          ―*


「ミア~学校たのしいぃか?」

「たのしぃ~勉強、おもしろーい」

 新しもの好きなんだろな、なんでも興味を示して、常に本を読んでたりする。知らないことを知るというのは、ミアのセカイにないものばかりなんだろう。


          *

 同じ時間軸の中で、文明に大きな幅がある。

 このセカイを軸にいえば、何千年と先をいった文明もあれば、後退した文明のままのセカイがある。

 それもこれも、オレたち一族がすべてを維持し調整するからだ。

 セカイを決めるのはそのセカイの住人、セカイを導くのがオレたち一族。

          *


「傲慢で、思いのままにならないと気が済まない、だからオレたちのセカイは滅んだ」

思わず、声に出してしまう。

「んぅ~?どうしたぁ瑛斗、怖い顔してるぅ~」

「ああ、悪い、悪い、ちょっと浸ってしまった」

 いかんな、組織の事を考えると嫌気が増す。

 こんな日にこんな事を思うなんてもったいない。

 オレの近くにはこんなにもヒマワリのような笑顔をもつ少女と一緒にいるのに。

「おーし、飛ばすぞ、ミア」

「うわぁ~~はやいはやい~」

 彼女はうれしそうにオレにしがみつき、キャッキャと自転車をこいで、学校に向かう。

 学校に着くまでの間、ミアは誰にも干渉されることなく、オレは、途中クラスメイトに声掛けられても、誰も茶菓されることはなかった。オレだけが、見えて、オレ以外は見えない。この能力はとんどもないな。チートやチート~ってツンツン髪した人が叫びそう。

「ミア、もういいぞ、姿見せても」

「はぁい」

『解除』

 解くときは、能力によるらしいが、さほど、情報量が必要としないものは意外とあっさりなんだよな。

学校の駐輪場についたオレたちへ、教室に向かう。


「よぉ、瑛斗、今日も彼女と一緒に登校かよ、うらやましいな」

「ミアちゃん、おはよぉ~」

 教室に向かう中声をかけられる。

 仲のいい、高校で2年も付き合いがあり、クラスが変わらず、そこそこ気が合い、そこそこ付き合いがる。まぁ知り合いだ。

「そこは友達だろう?」


           *

 勝手に人の思考を読むな・・・・友達だな。

 んで、同じ組織にいる、ヤンチャ感溢れる感じでクラスでも中々人気がありる。

 盛り上げキャラで、名前は 戸賀 雄二

           *


「おはよぉ~とがぁくん」

 とがぁ?誰に対しても、ふあふあな感じの物言いをするミア。

「それで、とがぁくんは、わざわざ朝から何を絡んでくるのかな?」

「あきぃとくん、そんなつれないこと言わないでくれないかな?」

 戸賀はポケットから、折りたたんだ一枚の紙きれを出しくる。

「そっちの趣味はないし、他を当たってくれると助かるのだけど、そうすれば、友人に昇格するけど、どうかな?」

「友人じゃん?親友に昇格してほしいくらいだ。瑛斗の味方なんだけど、これでも?」

「そうだね、親友は無理だけど、味方でいてくれるのは助かる」

 今後のためにも。

「その紙はなんだ?」

「まぁ読めばわかるよ、朝とは別のモノだよ、楽しめた?」

「おまえかよおおおおおおおおお」

「いたいたいたい・・・俺はそっちの趣味ねーぞ」

 思わず、戸賀に蹴りをくらわせてしまう。正当な権利だ。誰のせいで、誰のせいだぁ、オレのお宝を処分しなきゃいけない。

 あー涙でてきそうだ。

「衣笠さんに見られたか、わはは、わが校の美女二人と一緒に住んでるんだ、それくらいのバチは受けてもらわねば」

 戸賀は笑いながら、ミアに別れを告げて、笑いながら、教室に入る後ろ姿に、思わず心の中でファッキン。

 受け取った紙をポケットに入れて、オレたちも、教室に。

 戸賀に手を振るミアにそっと背中に手をやり、行くようにすすめる。

「瑛斗面白いね~エロほん?」

「・・・口に出さないでくれ・・・・みんな見てるから」

 クラスとメートの視線が…

 はぁ…純真無垢なお姫様はふあふあなのに、意外と会話の流れを読むのが上手らしい。

 オレたちは席に着き、その隣にミアが座る。


           *

 ミアは学校に在籍してない時から、いつも隣にいる。

 堂々と、まぁ姿は見えないんだけど、【言葉】で、支配しオレの席の隣くる。まぁ来るのはいいが、安心して授業に集中できるし。

 転入してからも、その【言葉】でオレの隣にくる。席替えでオレの隣が外れても、隣に生徒に【言葉】で変わらせる。

 ミアはオレの事、大好きすぎる。

           *


「んでエロ本ってなに?」

 席について、落ち着きたいのに落ち着かせることがない、クラスメートにグーくらわせたい。

「由佳、男の秘密に興味もつなら、彼氏だけにしてくれ」

「いやいや、毎晩毎晩、ミアちゃん相手になにをしてるのか、興味もつじゃん?」

「してねーし、ミアの前で変なこと言うな」

  

           *

 織部 由佳、同じクラスでショートポニーがポイント。活発ある感じでスポーツ系少女、戸賀と同じく、2年間一緒で今年もまた、同じという。

 それでいて組織が一緒、どんだけ当たり前のようにうちの組織は固めてるの?分散させてほしいぞ。

           *


「ゆーか、瑛斗のエロほんみたいのぉ?」

 由佳の言葉に反応するかのように、会話に参加してくる。

「お、ミアは知ってるんだね、どんなのか見てみたいわ」

 横目でチラリオレを見る。おまえなー、食いつくな食いつくな、羞恥心がないのか

「ミア、言わないでくれ・・・・頼む」

 懇願するように、手を合わせる。

「瑛斗は、羞恥を晒しなよ ふふふ・・・」

「あぁ?黙っててくれ、由佳」

「瑛斗のエロほんは、きんいろの髪したおんなの人ばかりでおっぱいも大きい」

 ミアは、自分の胸に手をあてて、弾ませていた。


「―――えっ」


 セカイが止まる。今【言葉】使った?という疑問が生まれた。


「瑛斗・・・あんた・・・・」

 あー、ですよね。

 蔑んだ目を辞めて頂けると大変、恐縮ではありますがうれしいのですが、由佳さん。

「っちっ、ちがうからな、違うぞ、ミアをそんな目で見てないし」

 似たような言い分けを今朝もした気がする、デジャブ。

「だれもミアっていってないんだけど?自分からそういうなんて・・・」

「ほえ?」

 当の本人も、エロ本がどんな用途かはわかってはいるが、それが自分が欲求対象になっているとは思ってないのだろう、不思議な顔してる。

 それでいいのだけど。

「ミア、こんな変態と一緒に住んだらだめ。いつ、オオカミになるかわかんないわ」

「オオカミ?瑛斗、イヌなの?」

「なんねーよ、ミアにいらんこと吹き込むな」

「ミアが今まで無事でよかった、これだから男は・・・」

 オレに睨みをきかせて、ミアの身体を包むように、抱きつき、防衛体制をとる由佳。

 おいおい、オレを世間一般と一緒にするなよ?オレには心に決めたやつがいるんだからな。と言いたいが、言えない。無意味過ぎて、傷つきそう。

「おーおー瑛斗、周りみてみろ」

 由佳とにらみ合いをしているとこに、戸賀がオレの肩に手を乗せくる。

「んぁ?今はそれどこじゃねー、ミアが汚される」

「汚そうとしてんのあんたでしょ そのエロ本で、ミアにやらしいことさせてるでしょ?」

「わかったわかった、二人とも落ち着け、特に瑛斗、おまえは弁明をしたほうがいいかもしれない」

「え?」

 周りを見ると、男も女も、怒りや侮蔑が入り混じるようにオレたちを見ている。

 特にオレを…

 おいおい、オレのエロ本がカモフラージュであることを説明しないといけない感じか?できないけど…


 その後、戸賀のおかげで、色々な思いを収束させてくれた。持つべきものは友だな。

 ミアは何が起きてるのかわかっているのかわかっていないのか、机に突っ伏すオレの頭を撫でてくれた。やさしいな~。

 変な誓いを立てられて、こうして授業を受ける中、今朝、戸賀からもらった紙を思い出し、あー少しこの非現実を逃避したい。

 紙を取り出し、目に熱が籠る。瞳の色は黒から青に、一族特融の深い藍色に変わる。


 チラシと同じように、異質で異様な紙には、文字が浮かび上がる。


――― 瑛斗、シカイができたから、時間を取り次第、回収にするように

  

オワーゾ・ド・バサージュ 

       ブルーロワ・アルバトル

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