第3話 厨二病は学生の本文である。
オレたちは朝食を済ませて、ミアと一緒に学校に向かうことにした。舞は、許嫁が用意してくれた車で執事と一緒に先に行ってしまってる。
残念なことに、乗せてはもらえないというか、もらうわけにはいかないのだ。
双方に変な噂が出回り、ご迷惑をかけるわけにはいかない。
今の生活ですら、許嫁からしたら迷惑で、男と一つ屋根の下というのは、気が気でならないのではないかと思う。
譲歩してくれるのは今住んでいる家が特殊構造であることだ。
外観からみたら、二つ家が並んでアパートみたいな感じに見える事、もっと遠く、20mくらい離れてみると、無駄に広い庭がオプションとしてある。
「いや~この家(アパート風)に対して、この庭の広さはないと思うんだが」
この無駄に無駄に広い庭が、許嫁の愛の広さなんだろうな~と思いながら、ミアと一緒に自転車を押しながら、オレたち専用の出口に向かう。
「ひーろーいねー、瑛斗~」
間延びしたような話し方、嫌いじゃないが外観の容姿に伴わないのは、萌えなのか?
「ああ、無駄にな、徹底してるわ~あの許嫁・・・」
オレたちは正門からは出られない、いつも急用出口で家の真裏からでないといけないわけだ。
これも、変な噂が立たないように。
一緒に住んでるのは、執事か使用人とかそんな風に思われるようにという配慮らしい。
配慮なんて、言葉がでるあたり使用人思想だな。…オレ、雇い主なんだけど・・・・と愚痴がこぼれてしまう。
家の持ち主が、許嫁というのがいかんなー。どうも肩身を狭くなる。
家の内装、外装は舞がデザインして、セキュリティ面は許嫁だ。
内装に関して、二つに分かれてるのはプライベートのみで、共有スペースが設けられるのはごはんを食べるとこだけ。
そこは舞が食事を持ち運びをしないでいいようにだとか、そんなこと言ってな~。
セキュリティ面では、お互いのプライベートスペースには電子ロックがあること、週に1回だけオレの部屋だけロックが解除される。
その時に舞は部屋掃除をしにくる。
細かくな・・・細かく・・・・ああ・・・思い出してくるだけで泣けてくる。
「ミア・・・お前を今度から愛でさせてくれ」
ミアの頭を撫でて、自転車にまたがる。
ミアも嬉しそうに撫でられてニコニコして後ろに腰を下ろす。
「うんうん、いいよ~」
ああ、かわいい、この純真無垢がいい。ほのぼのする。
なんでオレ舞の事好きなんだろと考えてしまうわ・・・
ほのぼのする気持ちで、自転車をこぎだし、いざ学校へ。
今日も、いい天気で春日和、残念ながら桜はほぼ散ってしまってる。
葉桜になりかけて、桜舞う登校とはいかない。
―高校最後の1年で、舞と過ごす最後の年で、非日常生活を締め括る年でもある。
「ひゃ~はやーぃ、はや~ぃ」
オレの腰に手を回してはしゃぐ、(胸が当たる)すごく楽しそうに、(離れた)オレを見ては周りを見る。(あたる)緩い坂を軽くこぎながら、オレもミアと一緒に笑いながら学校を目指す。
「ミア、姿消しておいてくれな~」
ミアは、周りをきょろきょろ、まるで初めて見る景色を楽しむかのように。いつも楽しそうにしている。ここ1年ずっと見ている景色なのにな。
「はぁ~ぃ」
[うちの姿は、瑛斗にしか見えない]
ミアの目が輝く、クリっとした目が、その中にある綺麗な翡翠のような瞳が金色に変わり、光輝く。
何かが身体をすり抜ける感触がミアを中心に広がっているような感覚。
*
最初は【言葉】だけで、事をなす。
何てことを信じられなかったけど、出会った時にすぐに解消された、彼女自身がセカイを滅ぼして唯一の生き残りだと証明された事で、納得してしまった。
――― 最強にして最弱の終末の
なんて厨二感めいた二つ名を付けている。オレの中で。
そんな危険な存在も故意にセカイを滅ぼしたわけではないらしいから、こうして、一緒の学校に行ってるわけだが。
一緒に登校するつもりもなければ、学校に行かせる気もなかったんだけど、【言葉】で無理に連れ出されて、一緒に授業を受けるなんてことをしていた。
まぁ誰もミアには気づいていなかったんだけど。
オレの所属する組織に頼んで、彼女に人権を与えて、このセカイの住人してもらい学校の書類を偽造してもらい、転入という形で今に至る。
*
「ミア~学校たのしいぃか?」
「たのしぃ~勉強、おもしろーい」
新しもの好きなんだろな、なんでも興味を示して、常に本を読んでたりする。知らないことを知るというのは、ミアのセカイにないものばかりなんだろう。
*
同じ時間軸の中で、文明に大きな幅がある。
このセカイを軸にいえば、何千年と先をいった文明もあれば、後退した文明のままのセカイがある。
それもこれも、オレたち一族がすべてを維持し調整するからだ。
セカイを決めるのはそのセカイの住人、セカイを導くのがオレたち一族。
*
――「傲慢で、思いのままにならないと気が済まない、だからオレたちのセカイは滅んだ」
思わず、声に出してしまう。
「んぅ~?どうしたぁ瑛斗、怖い顔してるぅ~」
「ああ、悪い、悪い、ちょっと浸ってしまった」
いかんな、組織の事を考えると嫌気が増す。
こんな日にこんな事を思うなんてもったいない。
オレの近くにはこんなにもヒマワリのような笑顔をもつ少女と一緒にいるのに。
「おーし、飛ばすぞ、ミア」
「うわぁ~~はやいはやい~」
彼女はうれしそうにオレにしがみつき、キャッキャと自転車をこいで、学校に向かう。
学校に着くまでの間、ミアは誰にも干渉されることなく、オレは、途中クラスメイトに声掛けられても、誰も茶菓されることはなかった。オレだけが、見えて、オレ以外は見えない。この能力はとんどもないな。チートやチート~ってツンツン髪した人が叫びそう。
「ミア、もういいぞ、姿見せても」
「はぁい」
『解除』
解くときは、能力によるらしいが、さほど、情報量が必要としないものは意外とあっさりなんだよな。
学校の駐輪場についたオレたちは、教室に向かう。
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