第5話 裁判はなかなか終わらない

 機関からのメッセージを読んでからというもの、授業に集中することができず、淡々と過ごして昼休み、オレたちは屋上のテラスの一つに来ている。

 授業を淡々と受けている最中も、由佳さんの威嚇は止むことはなく、昼休みもそれが続いている。


「ぐるるる…」


 ミアをオレから離し、ミアの防衛に努めている、防衛大臣がいる。

防衛大臣は、ミアの身体を庇うようにしてご飯を食している。

「いつまで引っ張るの?由佳」

「安心できるまでよ、納得できてないんだから」

 なにを納得できないのか、どういいわけしても納得いかないだろ?

「はっはっは、瑛斗も男だ、それに、こんな可愛い娘が傍に居れば、何かで代用しないと、さすがにパンクするぞ?」

 さも、フォローをしている戸賀だが、それは勘違いだ。

「だから、オレがミアに気があるような風潮で話を進めるな」

「代用…この身体に何を想像してるのよ?」

 由佳は、ミアの身体に手をまわし、撫でまわしている。

 こいつら…どこまで行く気だよ、終わらせる気がねーんだな。

「…ミア、おまえも何か言ってくれよ」

「うーん、うちはわからないからな~…エロほんはだめなの?」

「内容について、ミアはどう思うんだ?」

 男にとって、エロ本は必需品で聖書だ。聖書。

「…金色の髪でおっぱいおおきいのが、うちと関係あるの?」

 関連性を結びつけずにいるミアは、オレらを見まわしている。

「そうだろう、そうだろ、ほら、見ろ」

 オレもミアに続き、二人にみる。

「まぁミアちゃんが嫌な気分になってないなら、それでいいんだけど」

 戸賀も、納得できたらしく仕方ねーななんて言ってる。どういう意味だ?あぁ?

「…ねぇ」

 先ほどから、沈黙している由佳、ミアの胸をもみもみしてる。

「さっきから、くすぐったいよー、ゆーかぁ」

 由佳は、もみもみしながら、オレを見てくる。

 なんだよ?


「ミア、ブラしてないんだけど?」


 その発言に、オレは思わず、口から弁当を吹き出し、戸賀は戸賀で、マジでか、なんて言いながら、由佳に確認している。


「さて、今から裁判を行います」

 どうやら、オレは罪を犯しているらしい。

 裁判官を戸賀、検察官を由佳、被疑者を瑛斗、被害者をミアの構成で今から始まる。

無罪を主張したのに、弁護人がいないとか、どうなの?

「では、はじめに聞きたいことがあるわ、瑛斗」

 どうやら、尋問開始らしい…眼鏡もないのに、眼鏡があるかのようにクイッとあげる真似をする由佳。

「被害者のミアがブラをしていない件について、その理由を言いなさい」

 お昼休み中に終わるんだろうな?とよそ事を考えながらも、嘆息をもらして答える。

「持ってないからだろう、それ以外に何があるんだよ?」

「なぜ、買ってあげないのでしょうか?」

「恥ずかしいからに決まってるだろう、男が女物の下着コーナーとかどんな変態だよ」

「被疑者の発言を認めます」

 戸賀もうんうん、と言いながら賛同する。

するなら、この裁判を終わらせろと目で訴えるが、無理だ、だって楽しい。

とサインを顔で送ってくる。くたばれ。

「恥ずかしいという理由で、今までに買わないというのは無理があるわ。誰かに頼めばいいじゃない、例えば、わたしとか、一緒に住んでる舞にでも頼めばいい」

「検察官の発言を認めます」

「あー?ブラを買ってこいなんて言えるか、別になくても何もないんだからいいだろう」

「異議あり!それは、結果論です、裁判長」

「検察官の異議を認めます」

「何もなかったということは、これからは何かあるかもしれないという事よ」

「異議あり!それは可能性の話で、推測で勝手な妄想だ」

「異議を認めます」

 オレも由佳もヒートアップしていく様を、戸賀は笑いを堪え、ミアは発言をするたび、顔を左右に動かし、楽しそうに見ている。庇えよコラっ。

「これはあくまで、推測ですが、被疑者はミアがブラをしてないのを楽しんでいたのではないかと思っています」

「異議あり、人を変質者扱いする上に、妄想が斜め上行き過ぎてるぞ」

「その異議は認めることができない、瑛斗」

「ああ、なんでだよ」

 と、戸賀に睨みをつけるが、戸賀の変わりに由佳が答えてきた。

「だって、男はエロだもん、そんな状況を楽しんでるとしか思えない」

「検察側の発言を認めます」

「異議あり、それこそ、おかしいだろ、エロ=すべての男が、変態じみた欲情をしているなんて思うなよ」

「被疑者の発言を認めます」

 しかし、不毛だ、この裁判は終わらせねば…

「裁判長いいですか?」

 オレは、戸賀に挙手をあげる。折れるしかない。

「どうぞ、瑛斗」

「今回のこの裁判は、オレが有罪でいいからさ。由佳、今度でいいからミアに下着など買ってきてくれ」

 それどこに置くんだよ、しかも、洗うの誰だよ。

なんて思うが、言うとややこしくなる。

「どうだ、由佳?」

 裁判長こと戸賀は、由佳にオレの提案を受け入れるかどうか判断を委ねている。

「…仕方ないわ、ミア、今度行こうね」

「あーい」

 由佳もミアも受け入れてくれたらしいがミアは、なんも感じてないだろうな。

 これでようやく、収まる…はずなのに…


「ところで、ミアちゃん」

 戸賀はミアに質問している。なんだよ、まだあんのか?

こちらをみる戸賀はにやけている。

「お風呂は一緒に入らされたりしてないよね?」

 もちろん、由佳も顔を引きつりながらも、ミアに、そんなことあるわけないよね?なんて聞いてる。

 ミアは、二人の顔を交互に見ながら、そしてオレをみる。

「瑛斗と一緒に入ってるけど…ダメなの?」


「…………」

三人、絶句である。


――― 裁判は継続することになる。

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