鈴の月
虎斑
鈴の時
内裏へと続く道を歩く。
ただひたすらに。
その人影はどこか覚束なく、だが目的があるようでふらふらと道を進んでいる。
夜の御所は焚き火の揺れる灯りばかりでしっとりとした闇に包まれていた。
────夜の御所には鬼が棲む。
そう噂されるほど人は闇を嫌い、恐れていた。
「ぁ……。ぁぁ……。」
涎を垂らし連れ歩く姿はまさに鬼であった。
「どうした、お主。」
後から覚束ない足取りの男を呼ぶ声がした。
────男が振り返る。
直後御所の中には悲鳴が渡った。
だが、それは闇に吸い込まれ誰にも届くことは無かった。
声をかけた男が伸ばした手のように、どこにも届かずただそこに消えていった。
鈴の月 虎斑 @kohaan571
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