第5話 魔物の美味しいレストラン
将也は予備校に行けないのでエリーを幽閉している部屋で勉強をしていた。
「来週の模試は受けられるかわからないけど、勉強しなきゃ....」
せっせと勉強する将也をエリーは退屈そうに眺めていた。
「ここ何日もそのようなことをやって飽きないのですか?」
エリーは将也の参考書をパラパラとめくっていた。
「僕にはとても必要なことなのさ....」
「ふーん...」
エリーはかまってもらえないと理解して将也の電子辞書をいじり始めた。
アヤは椅子に腰かけ本を読んでいる。
しばらく無言の時間が続いた。
すると部屋に黒い影が現れニアが姿を現した。
「やっほ~!みんな久しぶり!!エリーちゃんを迎えにきましたー!」
相変わらずの満面の笑みで八重歯がチラっと見えた。
「もうそんな時間ですか、では魔王様、エリー様、しばらく待っていてください。」
アヤは読んでいた本を閉じ部屋を出ていった。
「もう幽閉生活も終わりですか、なんか少しだけ寂しいですね...」
エリーは困ったように笑った。
将也は手を止めてエリーに手を差し伸べた。
「色々教えてくれてありがとう。何か機会があったらよろしくね。」
「はい!」
2人はギュッと握手をした。
「好きな時に遊びに来てもいいよ~!」
ニアが能天気に笑いながら言った。
「そうですね、お礼も兼ねて暇なときにお土産を持って遊びに来ます。」
エリーはニアの頭をそっと撫でた。
「じー....」
将也はニアをじっとりと見ている。
「どうかしましたか魔王様?」
「ニアってそのフードいつも被っているんだね....」
将也はニアの頭に顔を近づけた。
「気になります?」
将也が首を縦に振るとニアはもじもじしながらフードを外した。
「少し恥ずかしいですけど....」
ニアの頭には三角の獣の耳、いや猫の耳があった。
将也は思わず耳を優しく摘まんだ。
「すげー!本物だ!!」
将也の指に合わせてピクピク動く耳は猫そのものだった。
「魔王様....くすぐったいです.....」
「あっ!ごめん..」
手を離すとニアは顔を赤くしながら自分の耳を気にしている。
「ふぅ~、証は普通人前に出さないものですよ....」
ニアは耳を触りながら答えた。
「魔王様も前に渡した首飾りを人前に出してはいけませんよ。あれは自分が魔王であるっと言っているようなものなのですから、その場で人間に捕まっちゃいます。」
「そうなんだ...」
将也は首飾りを服の上から抑えた。
「でもニア様は人間の間でも神様として崇拝されていますよ!」
エリーが目を輝かせながら言った。
「え?そうなの?」
将也が尋ねるとエリーは目を輝かせながら話し始めた。
「祖父が言っておりました。昔に起きた地震の影響で津波が王国に迫った時に、フードを被り猫の姿をした神様が波の前に立ちはだかり津波を食い止めたと!」
「えへへ、若気の至りってやつだよ~」
ニアは照れくさそうに笑った。
(その見た目で若気の至りね....)
将也は笑顔のニアを見た。
(僕って猫派だし子供とか好きだからなぁ。こんな妹が欲しかったな....)
するとアヤが部屋に帰ってきて将也を見た。
「魔王様、今変なこと考えませんでしたか?」
アヤが殺人スマイルで将也を見た。
「か、かんがえてない!!」
「あっ、そうですか失礼しました。」
するとアヤはエリーに着替えを渡した。
その服は最初にエリーが来ていたドレスであったがボロボロになっていた。
「あたかも乱暴な扱いをされたように手直ししました。見た目はあれですが着心地は変わりませんし、もちろん異臭などもしません。」
エリーはドレスを受け取るとクンクンとにおいを嗅いだ。
「アヤさんと同じ匂いがする!」
エリーがそう言うとアヤは少し顔を赤らめた。
「ほらっ!」
エリーが将也にドレスを差し出したので、将也も匂いを嗅いだ。
「ほんとだ!アヤと同じだ!」
アヤは顔を赤くしたまま剣を将也の前に出した。
「嗅がないでください。その鼻削ぎ落しますよ?」
「ご、ごめん....」
その後、ニアの魔法で王国へ行き、将也とアヤを城下町に置いた後にニアはエリーをトリーマム王国の城まで送っていった。
「なんで僕までここに来なきゃいけないの?」
将也はアヤと賑わう町の中にいた。
「魔王様を紹介しなくてはいけない人物があと1人いらっしゃいます。とあるお店で待ち合わせなのですが、少し歩かないといけないですね。」
アヤはスタスタと歩き始めた。
将也は周りを見渡した。
文明は中世のヨーロッパという感じであり、主に食材と武器類や衣服が売られていた。元の世界とは異世界であるが、太陽や白い月の姿、生えている植物などはほとんど同じ姿をしていた。
将也はリュックから自分で作成した単語帳を出し、眺めながらアヤについて行った。
アヤの前を荷車みたいなものが通りかかったのでアヤが止まった。しかし、単語帳を読んでいた将也は気づかずにアヤの背中にぶつかった。
「あ!ごめん!!」
後ずさりして謝るとアヤは正面から将也に寄ってきた。
(ひっ!)
将也は目を瞑った。
「魔王様は何を読んでいらっしゃるのですか?」
薄っすらと目を開けるとアヤは将也の単語帳を覗き込んでいた。
「あっ、これは勉強中にわからなかった単語をメモして作った単語帳だよ。」
アヤは不思議そうに単語帳を見た。
「なんか気味の悪い文字ね...、こんなの覚えるのですか?」
「うん、大学受験には必須だからね。」
「そうですか...。あっ!もうすぐ待ち合わせの場所ですよ。」
最近、アヤとは打ち解けてきたと思うのだが、友達という感じでもない気がする。
将也とアヤはある店の前にやってきた。
その店の看板には『まるや』と書いてある。
中に入ると他に客はいなく、カウンターやテーブル席があり、電気がないことを除けば少し豪華な店という感じであった。
「いらっしゃいませ!!」
勢いよく挨拶をしたのは爽やかな青年だった。
しかし、板前のような服装であったが背中が大きく開いており、そこから悪魔を連想させる黒い大きな羽が生えていた。
「初めまして。私はここで店を開いているコウと申します。」
コウは挨拶をすると2人を襖のようなもので仕切られた奥の席に案内した。
「君は魔物だけどこんな人間の多いところで店なんて出して大丈夫なの?」
将也は席に着くと早速質問をした。
「はい、この国では王国に認められた魔物は人間扱いされるので問題はありません、ちなみにあれが王国からの許可書です。」
店の一番目立つ壁にその許可書は大きく掲げられている。
「こちらお水です。」
コウの後ろから黒のショートヘアーの女の子が水を持って来た。
「こちらは私の妹のコトハです。少し人見知りですがうちの看板娘なんですよ。」
コトハは小さくお辞儀をした。コウと同様に背中からは黒い羽が生えていた。
「ではもうすぐ武神様が来られますので少しだけ待っていてください。」
そう言うと、兄妹は店の奥に入って行った。
「アヤ、これから会う武神様ってどんな人なの?」
将也は言葉の響きを聞いて少し不安になった。
「そうですね、人間最強の剣士といったところでしょう。初代魔王様が生きておられた時から武神と呼ばれていたので本当に人間であるかはわかりませんが。」
(やばい、そんな凄い人と話すのか、しかも魔王という立場って退治されてもおかしくないぞ....)
将也は顔を青くしながらも、単語帳に目をやって平然を保とうとしていた。
すると、コンコンと音がした。
「武神様がおいでなさいました。」
将也は生唾を飲んだ。
「ウイッス!」
襖があき、中に入ってきたの緑髪の短い髪をした可愛らしい女の子で見た目はアヤより一回り小さかった。
「お久しぶりです武神様。」
アヤはその女の子に挨拶をすると握手をした。
「久しぶり!相変わらずって感じだね。」
「そちらこそお変わりなく、こちらは新しい魔王様です。」
将也はキョトンとしていたがアヤに肘で突かれて挨拶と握手をした。
「ウチの名前はパルメ。ずっと武神様って呼ばれてるけどあんまりその呼び方は好きじゃないんだよね。」
パルメは苦笑いしながら将也と握手をした。
するとコトハがパルメの水と何かの肉料理を持って来た。
「こちらはこの店の名物のまる肉です。秘伝のタレをつけて焼いております。」
串に肉が刺さっていて焼き鳥のようであったが今までに嗅いだことのない美味しそうな匂いがした。
「コトハちゃん久しぶり~!今度ウチの店にも働きに来ない?」
パルメはコトハの手をグイグイ引っ張った。
「武神様困ります。兄と2人で開いているのですから...」
「ちぇ~、お給料弾むのに~...」
ほっぺを膨らましているパルメの行動は子どものようだった。
パルメがコトハにちょっかいを出しているとき、将也はアヤに小声で尋ねた。
「(あんな女の子が最強の剣士なの?イメージと違うっていうか...)」
「(はい、今はあんな感じですが昔はかなり恐ろしい方でしたよ。)」
2人でヒソヒソと話していると、パルメは将也たちを目を細めて睨みつけた。
「ちょっと、ウチの目の前で内緒話しないでよ~。あっ!いつもの3つで!!」
注文を受け、コトハは厨房の方へ行った。
「今日は魔王様と武神様の顔合わせなので美味しくご飯でも食べましょう。」
アヤがそういうとパルメはじっとりと将也を見つめた。
「今回の魔王はとっても弱そうね~、私が何かしなくても退治されそう。」
パルメはケラケラと笑った。
(そりゃそこらの浪人生が刃物を持った人に勝てるわけがないよ...)
将也も苦笑いをした。
「でもなんで顔を合わせる必要があったの?」
将也はアヤに聞いた。
「前にも言いましたが、魔王様は魔物達にはなくてはならない存在なのです。それなのに誤って武神様に殺されては意味がないのですよ。」
「武神って魔王を倒すことができる力を持つ1人の戦士に与えられる称号なんだけどね、倒してはいけないってウチの存在意義が無くなるよ~。」
パルメがうなだれるように答えた。
「お待たせしました。魔酒でございます。」
コトハが入ってきて、お酒のようなものを3つ持って来た。
「あっ!僕は未成年なのでお酒はちょっと....」
「大丈夫ですよ、こちらの魔酒というのは植物を発酵させたりせずに水に魔力を込めた水なので、体には害はありません。」
将也は恐る恐る飲んでみた。
(あれ?特に何も.....ただの水みたいだけど...)
お酒を飲んだことは無かったが明らかにただの水だと、将也は思った。
それからしばらく飲み食いをした。
将也には変化が無く、アヤは顔が赤らむ程度の変化しかなかった。しかしパルメはだいぶ酔っぱらっているような感じであった。
「全くぅ~、魔王が武神様も知らないなんてダメじゃないのぉ~」
パルメは呂律が回っていなく、頬を赤らめていた。
「この国でぇ~、
パルメの目もすっかりトロンとしている。
「武神様、少し飲みすぎじゃないですか?」
「むぅ~、そんなこと言うなら前みたいにやつけちゃうぞぉ~!!」
パルメは肉を刺していた串をアヤに向けた。
するとコトハが食器を下げに来た。
「この魔酒って本当に体に害はないのですか?」
将也は酔っぱらっているパルメを見ながらコトハに尋ねた。
「はい。どんなに飲んでも普通の人は顔が赤らむ程度でほろ酔い以上にはなりません。でもパルメさんだけこんなに酔っちゃうみたいなんですよ。」
コトハがクスッと笑って答えた。
するとパルメはコトハに気づき、もの凄いスピードでコトハの腕を掴んだ。
「コトハちゃんゲットぉ~!はい、ウチで働いてねぇ~!」
将也はコトハに少し同情したが、パルメをコトハに任せてアヤにまた小声で尋ねた。
「(パルメと戦ったことあるの?)」
アヤは苦笑いをした。
「(はい、かなり昔ですが一度だけこの子が魔王城に1人で攻めてきたんです。初代魔王様も含め、誰も彼女に傷の一つも付けれませんでした。)」
「(え!?魔王城は大丈夫だったの?)」
「(相当な被害でしたが、魔王様がこの子を説得して帰ってもらったらしいです。私は気絶していたので覚えていませんが...)」
将也は店員にちょっかいを出す酔っぱらいを見た。
(人に歴史ありだな...)
さすがにコトハが可哀想だったので将也はパルメに話を切り出した。
「パルメもお店を開いてるのかな?」
パルメはちょっかいをやめて腰に手を当てて威張り始めた。
「そぉ!小さいお店だけどウチが直々に料理を出してるのぉ!!まぁ、開店日と開店時間は不規則だからいつも人来ないけどね!あはははは~!!」
大笑いをしているパルメを見て将也は苦笑いした。
「だけど...」
急に静かになりパルメが机に肘をたて、両手に頬を置いた。
「刃物では人や魔物を傷つけることしかできないと思っていたけど、料理では人の心を満たすことができるのよね、同じ刃物なのにぃ...」
するとコウがやってきて、伝票のようなやつを持って来た。
「もうそろそろお時間なので伝票をお持ちしました。」
店を出てパルメと別れるとニアが現れ、ニアの魔法で3人は魔王城へ帰った。
アヤから魔王として出来るだけ城の中にいるようにと言われたので将也は幽閉室の机で勉強をしていた。エリーはもうこの部屋にはいないがアヤとニアが同じ部屋でくつろいでいた。
(最近ドタバタして勉強できてないからなぁ...)
将也は予備校で使っている英語のテキストを復習していた。
順調に長文を読んでいくが一瞬思考が止まった。
(implication....あれ?なんだっけかなぁ~。単語帳にも書いたのに...)
単語自体の意味は分からないが将也は先を読み進めた。
(長文ではわからない単語が出てきて当然だからな、読んでいるうちに意味が分かるかも....)
しばらくして長文全体の流れを理解したが、implication、devise、retain...など単語単体での意味が曖昧なやつがチラホラあった。
将也は単語帳を出そうとリュックの中を探し始めた。しかし一向に単語帳は見当たらない。
「あっ!」
将也は思わず声を出してしまった。
「間抜けな声なんか出してどうかしました魔王様?」
アヤは本に目をやりながら尋ねた。
「あの店に単語帳忘れてきたかも....」
将也はガックリと肩を落とした。
「今から取りに行く?」
ニアが提案したがアヤは反対した。
「あそこのお店は夜が本業で今は人間も多くいると思うので明日にしましょう。」
将也はそうすることにした。
その日の夜。自分の部屋に戻り、寝る準備をしたがあの英単語が頭から離れない。
(implication、devise、retain....implication、devise、retain......辞書で一応調べたけど単語帳を見ないとなんかスッキリしないな....)
浪人生とは自分で決めた勉強方法にもルーティンワークがあり、それを外れると落ち着かないものなのである。
その頃。まるやは冒険から帰ってきた冒険者や仕事帰りの商人などで賑わっていた。
「普段は魔物を相手にしてるけどコトハちゃんに相手をしてもらうのが一番楽しいな!」
ある冒険者がコトハから酒をもらう時に上機嫌で言った。コトハも困ったように笑っていた。
「コウ君!注文いいかな?」
今度は小太りしているが温厚そうな商人の男性がコウを呼んだ。
「まる肉といつものお願い。いや~ここの食べ物は美味しいね。」
「いつもありがとうございます!少し量をサービスしておきますね!」
普段通りに店内は賑わっており、ここでは人間や魔物の種族などに関係なく、それぞれが楽しく過ごせる場になっていた。
「コトハちゃん、ちょっとだけ触っていいかな?」
冒険者の男がコトハの黒い羽を撫でた。
「ここはそういうお店じゃないですよ~。」
コトハが満更でもないような口調で注意をした。
「見た目よりもフワフワしてるんだね。」
「あっ!俺もコトハちゃんの羽触りたい!」
「俺も俺も!」
別の客も手を挙げたり、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
するとコウが壁の張り紙に指を向けた。
その張り紙には『羽タッチ有料』と書かれている。
「メニューだから支払える人だけ注文してください。料金は魔酒20杯分です!」
コウが言うと客たちはブーブー文句を言い始めたが、皆楽しそうに笑っていた。
すると、貴族の洋服を着た髭が特徴の太身の男とその付き人と思われる男が来店した。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
コウが爽やかに挨拶をしたがその男は店内を見回した。
「ふんっ、何か獣臭いと思ったら魔物が店を開いているのか、この国も落ちたもんだなっ!」
男の一言で店内は一瞬静まり返った。
「すみませんお客様、そのような差別的表現は困ります。王国からも許可書はもらっているので...」
コウは顔を引きつらせながらも笑顔で接客をした。
「ほぉ、まあ他に店も見つからんかったからここで食ってやるわ。」
周りの客がその男を見てヒソヒソと何か話している。
「お前ら庶民と一緒にするではないぞ!私は高貴な貴族のレイブン伯爵である!」
店内に嫌な空気が漂い始めた。
「お、お客様には特別に奥の部屋を準備いたしますのでそちらでお持ちください。」
コウは急いでレイブン伯爵を奥の部屋に案内した。
「水をお持ちしました。」
コトハが水を2つテーブルに置いた。するとレイブンはコップを持ちコトハの顔に目掛けて水をかけた。
「きゃっ!!」
「お前みたいな魔物の入れた水なんか飲めるか!早く酒持ってこい!」
コトハの悲鳴とレイブンの怒鳴り声が店内に響き渡った。
コウはすぐに部屋へ駆けつけた。
「どうかなされましたか?」
「その女が水を私の服にこぼしやがってな、どうしてくれるんだ?」
コウはコトハの元に行き、濡れて震えているコトハの背中を優しく撫でた。
「おいっ!その娘よりも早く私の酒を持ってこい!!」
レイブンはよりいっそ大きな声で怒鳴り、コウにも水をかけた。
「申し訳ございません、すぐに用意いたします。」
深々と頭を下げ、コウとコトハはその部屋から出た。
するとさっきまで愉快に飲んでいた冒険者や商人達が部屋の前に集まっていた。
「お客様方どうかなされましたか?」
コウが尋ねると冒険者は武器を腰かけて一歩前に出た。
「俺たちの大事な場所を侮辱する奴は貴族でも許さない!」
そう言って部屋へ入ろうとした。
「待ってくださいお客様!!店内ではそのようなことはおやめください!」
コウが抑えようとするが冒険者達は引く様子を見せない。
「大事な友人2人が目の前で水をかけられ、侮辱されているのを見て、何もできないなら私達は胸を張って冒険者などとは名乗れない、それに1人の人間として友を侮辱されることを許すことができない!」
さらに冒険者達の勢いが増した。しかし、コウとコトハはその冒険者達の前で跪き、両手、両膝、頭を床につけた。
「私らハーフと呼ばれる魔物達は王国から認められていても身分はあって無いようなものです。ここで騒ぎを起こすものなら国に反逆したと思われ処分の対象となります。そんな私達を友人とおっしゃっていただける皆様方に頭が上がりませんが、ここはどうか私らにお任せください!」
2人の格好を見て冒険者達は怯み、自分の席に戻って行った。
「おい!さっきからうるさいぞ!!さっさと酒持ってこい!」
「はい。申し訳ございません。すぐにお持ちします。」
2人は厨房へ移動した。
「大丈夫だよコトハ。兄ちゃんに任せておきな。」
コウはコトハに歯を見せて笑ったが、手を硬く握り締めていた。
(兄さん...)
ひとまず騒動は起きずに済んだが冒険者達はまだ気が収まらない様子であり、店の奥まで聞こえるような声でレイブンの悪口を言っていた。
「ったく、そんなに臭いなら帰って豪華なお屋敷でディナーでも楽しめばいいのにな!でもあのガマガエルには虫以外は食えないってか!!」
冒険者達は大きな声で笑った。
「クソっ、野蛮な冒険者どもめ、こんな店潰れちまえばいいのに...おっ?」
レイブンの足に何かがぶつかった。
拾い上げてみるとそれは将也の単語帳であった。
「なんだこの気味悪い文字は...ふーん」
レイブンはニタっと笑った。
「これは使えるぞ..クククッ...」
~魔物の美味しいレストラン~ END
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