第2話 魔王ライフスタート!


将也はすぐにドアを閉めた。

「今のは見間違えだよな、見間違え...見間違え....」

今度はそーっとドアを開けた。やはり大きな廊下だった。

「まだ夢の中か?でも....」

将也は軽く頬を叩いて現実であることを確認した。

「現実だ..どうしよう....」

将也は恐る恐る廊下に出た。

豪華なランプで照らせれた廊下は50メートル以上も続いており、所々に花が活けてある花瓶や絵画などが飾ってあった。

「立派な城みたいだな...」

すると将也の反対側からモップを持ったメイド姿の女の子が近づいてきた。

「あー忙しい忙しい!なんでこんな日にゴミがいっぱいあるのよっ!!」

駆け足で寄ってくる同い年くらいの女の子に将也は身構えながらも勇気を出して声をかけた。

「す、すみません、ここはどこですか?」

メイドはじっとりとした眼差しで将也を見つめた。

その女の子の格好はメイドの鏡のような格好をしていた。黒くて長い髪が毛先まで手入れが行き届いており、1つ結びの髪とカチューシャがよく似合っている。

「はぁ!?ここは魔王城よ!そんなことも知らないでよくここまで来れたわね!」

メイドはカツアゲをしているチンピラのような目をして将也の顔の前に顔を近づけた。その迫力に将也は後ずさりをして反射的に謝ってしまった。

「ったく、本当に忙しいわ....」

メイドは舌打ちをしながら腰に掛けてあった鞘から剣を引き抜き、将也の前に突き出した。

「ゴミが多いと思ったらここに親玉がいたってわけね、あー忙しい...」

将也はメイドの迫力に負けて腰を抜かしてしまった。

「なんでここに居るかは知らないけど魔王城に侵入してきた人間ゴミは始末されて当然よね....」

そう言うとメイドは将也目指して剣を振り下ろした。

「ひぃぃぃ!!」

将也は紙一重で避け、立ち上がり廊下を思いっきり走った。

(とりあえず部屋に戻らないと!)

チラッと後ろを見るとメイドは人間離れした物凄いスピードで追いかけてきた。

将也はほんの2秒くらいで追いつかれてしまい、振り回された剣を避けた拍子にバランスを崩して転んでしまった。

「最近のゴミは素早いのね...掃除方法を考えないと。」

メイドは将也の頭の上に剣を振り上げた。

(もうだめだ...)

将也は思いっきり目を瞑った。

それと同時に剣が固いものに当たったような乾いた音がした。

薄っすらと目を開けると何故かメイドの後姿と小さい女の子の背中が見えた。

「ふぅ~、危なかった...。昨日迎えに行きますって言ったじゃないですか魔王様。」

その子は昨日夢に出てきたニアという少女だった。

「ニアはなんでそのゴミを助けるのよ...」

メイドは鋭い目をしながらニアに聞いた。

「この方は今日から私たちが仕える魔王様なんだよね~。」

メイドは大きなため息をついて剣を鞘に戻した。

ニアはニコニコと笑っている。

「おはようございます魔王様!それにしてもよくアヤちゃんの剣から逃れられたね!」

「死ぬかと思ったぁ.....」

将也は力なく床に座り込んだ。

「こんなそこら辺のゴミと見分けがつかない人間が次の魔王様なの?」

メイドは軽蔑するような目で将也を見た。

「そうだよ。アヤちゃんも自己紹介してね!」

ニヤはメイドの肩をポンっと叩いた。

「私の名前はアヤです。どうぞよろしくお願いします魔王さま~。」

アヤは棒読みのまま自己紹介をした。

将也も簡単に自己紹介をした。

「じゃあ私は散らかっているゴミを掃除してきます。」

アヤはモップを取りに戻り、廊下を歩いて行った。

「なぁ、あれも魔物なのか?」

将也はニアに小声で聞いた。

「そうだよ。正確には魔物と人間のハーフなの。ハーフって言ってもただ魔物の血を引いているだけで親が必ずしも魔物と人間ってわけじゃないね。ここのお城の人はほとんどがハーフで魔物の分類として人間から嫌われているの.....。」

(2人とも同じ人間の女の子に見えるけどな...)

将也は少し寂しそうに話すニアを見て複雑な気分になった。

「アヤちゃんは魔物の中でも特に人間が嫌いなの。あんな感じだけど許してあげてね。」

ニアは困ったように笑った。

「じゃあ今から魔王になるための儀式を行うので私についてきてください!」

将也は昨日のことが夢ではないことを自覚し、受身のままニアの後に続いて歩いた。




『魔王の座』と呼ばれる広くて大きな場所につれて来られた。

名前の通りに魔王専用の椅子があり同じフロアよりも段差で少し高くなっていた。将也はその前に立たされた。自分の目の前には多くの魔物たちが列になって並んでいた。

「えぇ~っと、それでは新しい魔王様のために魔王の儀を行いたいと思います。」

ニアがそう言うと目の前の魔物たちは跪いた。将也はニアに言われた通り、黙って立ったままである。

「これは魔王の証であり、我々魔物の誇り高きエンブレム。歴代の魔王様方が身に着けていた唯一の形見。」

ニアは何かの金属で作られた首飾りを将也に掛けた。

その首飾りは扇形の中に三角形があり、その三角形の中に円が入っているデザインであった。

「これで儀式を終了します。皆さん持ち場に戻ってくださいね!」

次々と魔物たちが解散していった。

「じゃあ私も持ち場に戻りますので後のことはアヤちゃんに任せるね。」

「えっ?」

するとアヤが近づいてきた。

「私の役職は魔王様の側近なのでよろしくお願いしますね。魔王さま。」

明らかに嫌そうな顔をしている。

「僕は何かしなくちゃいけないのかな...?何もないなら勉きょ....」

「魔王様にはまずこの国の国王の娘を誘拐してもらいます。」

話終わる前に強い口調で言われた。

「えっ?誘拐するの?僕が?」

アヤがまたゴミを見るような目で将也を見た。

「この世界も知らないやつに他の仕事ができるわけないじゃない。それに魔王とはただ魔物のトップにいるだけで人間に恐怖を与えるだけでいいのですよ。」

(僕はただ勉強がしたいだけなのに、なんでこんなことに....)

将也は深くため息をついた。

「それでは魔王様。誘拐しに行きますよ。」


                      ~魔王ライフスタート!~ END


   

   つかえる呪文


 ・水平リーベ僕の船....

 ・貸そうかな?まあ、あてにすんなひど過ぎる借金

 ・リアカーなきK村....

 ・咲いたコスモス、コスモス咲いた。

 ・一夜一夜に人見ごろ

 ・人並みにおごれや

 ・ありおりはべりいまそがり

 ・ひいきにみいる

     ・

     ・

     ・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る