純恋

りんか

第1章

人生は、不幸と幸福が交互にやってくるのかもしれない。


高校1年生の春、不幸は幸福を連れてきた。

ふわり、羽のように舞う桜とともに。


私の名前は、本条真琴。

高校に入ったばかりの、新1年生。


「あれから、もう1年か・・・。」

私は、話すことが大好きで独り言が多いタイプだ。

だから、心の中で思っていることがバレバレなんだよね。


私は、学校に行く途中のこの道が好きだ。

今は、朝の8時。

この桜を見ると元気をもらっているような気がする。


時間を忘れて、じっと見ていると桜の花びらが鼻についた。

我に返り、時計を見ると8時15分。


「桜さん、行ってきます。」と元気よく挨拶をした。

「-おまえ、バカか?」


ため息とともに、呆れたような声が降ってきた。

バカ?今、私、バカって言われた?


後ろを振り返ると、170センチくらいの背の高い人が立っていた。

私と同じ制服を着ている。髪は茶髪で長い。しかも、ピアスを付けている。

ポケットに両手を突っ込んでいてチャラそう。


私と同い年には見えないな。先輩かな?


「あ、あの・・・。」

恐る恐る言いかけた。次の言葉が思いつかなかった。

だって、目の前には、いかにも不良って感じの人が立っているんだもん。


それにしても、綺麗な顔。よく見ると、カッコいいかも。

不良っぽいけど性格は悪そうには見えない。

今、バカって言ってきたのは、本当にこの人なの?

私の聞き間違い?

朝から、不良に絡まれるなんて運が悪いな・・・。


不良は無言で立っている。

顔は笑っていない。なんて冷たい目なんだろう。

かなり怖い。

私は、別に興味なんてないし(怖いだけ)

相手だって、私なんかに興味はないはず。

きっと、聞き間違えたのか、ケンカを売られたのだろう。

絶対そうだ。うん。


私は、無言で不良に背を向けた歩き始めた。

時間がないのだ。構っている暇はない。

無視無視。


「は?無視ですか?ほんとバカだな」

不良は、いきなり私の腕を掴んで言った。

「痛い。離してよ」

ドキ―っとする。思うように体が動かなかった。

怖い。まさか、殴られる??


不良は、目の前に立って私の顔をのぞいてきた。

「ほんとに、俺のこと覚えてないのか?」

さっきと違って優しい口調だった。


ー聞いたことある声ー

もしかして・・・。

「あ、あの・・・。お名前は、何ですか?」

恐る恐る、聞いてみる。

「俺の名前は、影山翼。おまえの名前は本条真琴だろ?」

「え?翼?ほんとに翼なの?」

嘘よ。嘘。だって、私の知っている翼は、こんな不良じゃない。

「俺は、翼だ。ちょっとイメチェンしてこんなになったけど」


やっぱり、あの時と変わらない優しい声だ。

――その時、私は思ったんだ――

奇跡は起きるんだ。

これが、新しい恋の始まりなんだって。

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純恋 りんか @aya051616

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