十 スキャンダラス・コラージュ

 喜多川珠代きたがわたまよにとって不愉快な噂が流れている。


 衆議院の解散が秒読みというこの時期にだ。

 噂によれば、珠代は科田丸しなたまる家の血筋にあらず、である。


 出所は評判の悪い投稿サイトだ。

 珠代へのやっかみ、嫌がらせの投稿と思われていた。

 珠代の事務所からの削除要請に運営者も応じた。

 ところがサイトを変えて同じ内容で投稿された。

 投稿を削除するごとに倍々ゲームのように投稿サイトが増えていった。

 評判の悪い週刊誌が尾ひれをつけて記事にした。


 ここから世間が注目するところとなり、珠代としても何らかの手を打たなければならなくなった。

 ネット風評対策のコンサルティング会社に委託して、問題の投稿を徹底的に削除させた。

 ところが、一件削除すると二件追加するという具合に、二のべき乗で対抗するように作られたボットが世界中の情報端末に仕込まれているらしく、コンサルティング会社は程なく白旗を揚げた。

「あれほど豪語していたのに、見かけ倒しってことね」

「申し訳ございません。結局、彼らは事態を悪化させただけでした。私の見込み違いでした」

御手洗みたらいさんほどの政治のプロもサイバー空間は勝手が違うってことね」

「面目ないことです」

 喜多川珠代の私設秘書御手洗は事態の悪化に不機嫌さを隠そうとしない。

 彼は豪腕でならした衆議院議員、間澤まざわ一郎の秘書を務めた人物で、間澤の豪腕ぶりは御手洗の水面下の工作があればこそだ。

 そんな彼が喜多川珠代の秘書を務めるのは、日本発の女性総理の資質があるとにらんだからだ。

 強固な地盤がある。

 カリスマ性もある。

 知名度も高い。

 あとは政治家としてのキャリアだけだ。


 親の七光りであぐらをかく二世、三世議員よりもずっと野心的で、有能だ。

 御手洗がフィクサーとしての人生の総仕上げに相応しい人形が珠代なのだ。

「御手洗さん、やはり彼女達を取り込むべきね」

「はい。今すぐにでも」

 こうして、加納美帆かのうみほ佳央かお姉妹は喜多川珠代から私的な面談の誘いを受けた。

 あの喜多川珠代からお呼びがかかったという舞い上がった感と、世が世なら主家のお姫様に会うという戸惑いが姉妹には入り交じっていた。

 どんなお誘いか、期待を込めて指定されたホテルへ向かった。


 部屋に通されると、珠代は既に椅子に座っており、秘書と打ち合わせをしている。

 美帆・佳央に気がつくと、満面の笑顔を浮かべて二人を抱きかかえ、ハグまでしてくれた。

「ようこそ。貴女達が加納家の方と聞いて、是非、会いたいと思ったの」

「光栄ですわ。世が世なら主君のお姫様にお声をかけていただけるなんて、夢のようです」

「あら、世が世なら貴女達姉妹は筆頭家老の娘として私と親しく遊んでたはずよ。

 だから姉妹のない私は貴女達を姉妹と思うことにしたわ」

 姉妹といってくれた。

 この一言にとどめを刺された。

 文字どおり、姫のためなら地獄の業火も潜る覚悟だ。

 暫く歓談が続いた後、珠代は本題を切り出した。

「実は変な噂を流されて困っているの」

 それは加納姉妹も気にしていたことだ。

 珠代は藩主の血筋でないとは、何を根拠にしているのか?

「私達も心配しているんです。それに憤慨しています」

「そこでお願いがあるの。貴女達に私の血筋の正当性をアピールして欲しいの」

「何をすればいいのでしょう?」

「選挙用に一緒に写真を撮ってもらいたいだけよ」

「えーっ、一緒に写真を撮ってもらえるんですか?」

「私達が入って、選挙運動の足を引っ張ったりしません?」

「その逆よ。

 筆頭家老のお嬢さんが一緒なら、私の、科田丸家の血筋を疑う有権者はいなくなるわ」

 こうして三人一緒の写真が地元で配るマニフェストに掲載される。

 この三人の写真は珠代陣営のイメージ戦術として有効に働いた。


 これが徒(あだ)になる。


 政治家を囲む家老の末裔、家柄の良い女性に『美しすぎる家老の末裔』の見出しに男性読者は反応するはず、との読みは的中した。

 姉妹の人気に便乗するように写真誌の取材が殺到した。

 そして、美帆が詠人のマンションから朝帰りするところを写真誌にスクープされた。


 姫の美しすぎる侍女、朝帰り。


 この見出しに、読者は飛びついた。


 現代版江島生島事件!


 用意周到な中見出しに、喜多川珠代を知らない歴女がネットで反応した。

 話題の政治家に連なる若い女性のスキャンダルは、ネタさえあれば記事はどうにでも料理できる。

 三人一緒の写真を撮影し終えた後で、こうなることを避けるため、御手洗は美帆と佳央に釘を刺した。

「公認のボーイフレンドであっても、選挙が終わるまではデートを控えてもらいたい」

 御手洗なりに二人の身体検査はした。

 お抱えの探偵を使って、素行、経済面、交遊面などを調べた。

 唯一、気になったのが詠人の存在だ。


 部下でも、政治的取り引きの相手でもない加納姉妹に強要できない御手洗は、やんわりと諭しただが、甘かった。悔やんでも詮無いことだ。

 美帆は実名こそ報道されなかったが、ご丁寧にもマニフェストの写真が無断使用されてた。

 珠代の事務所はマニフェスト写真の無断使用について強く抗議するとともに、美帆の名誉毀損で訴訟した。

 顔と名前が暴露されたショックで美帆は外出できなくなった。

 美帆に見間違えられた佳央もカメラマンや一般人に写真を撮られたり、後をつけられたりとストーカー行為を受けた。


 保守的な価値観が根強く残る地方の選挙区ではこれらの一連のことがマイナスに働くのだが、珠代へのダメージはマスコミやそれに扇動された野次馬の期待よりも小さかった。

 珠代への、卑怯極まりないネガティブキャンペーンとして弾劾する御手洗の戦術が功を奏したからだ。


「御手洗さん、彼女のこと、どう思います?」

 珠代は、地元から送られた討論会のチラシを机の上で広げた。

「なかなかの逸材をスカウトしましたね」

「次の選挙に出馬するの?」

「織田井政次が動いたのですから、先生(珠代)との全面対決を狙っているのでしょう」

 国政における野党第二党の県連は、前回の総選挙の後、すぐに新たな候補者を模索していた。

 前回の総選挙では独自候補を立てられなかった県連は、中央からの指示で、野党第一党候補者を選挙協力するという辛苦を舐めた。

 そこに手をさしのべたのが織田井政次だ。

 この党の発起人の一人であり、本来なら初代党首となるところを、自らは幹事長に納まりキングメーカー的存在として君臨する。

 その彼が水面下でスカウトしたのが、米国でも最高ランクのビジネススクールでMBAを取得し、外資系金融機関の日本法人でM&A担当幹部として経済番組にも出演する谷川麻紗たにかわまさだ。

 珠代に勝とも劣らない美貌の持ち主は七歳若い。

 東京在住の気鋭の金融ウーマンが、地方のセミナーの基調講演に、ほぼ毎月登壇している。

 地元の珠代の支持者でも勘の鋭い者は、ひょっとして、と悪いシナリオを描いた。


 そんな支持者の懸念の声が珠代に届いての御手洗との意見交換だった。

「……確かに、私との全面対決ね」

 同世代の女性同士の対決というのは無党派層の興味本位の視点だが、むしろ経済政策を得意とする点が対立軸になる。

「(珠代)先生には地元経済への実績をもっと強調していただきます」

「地元でガツガツするような真似はしたくないのだけど」

「先生、甘いですな」

 御手洗の指摘は現実になる。

 NPO主催の地域経済活性化討論会のパネリストとして、谷川麻紗は長野県の経済を語る常連の地位を確立した。

 地元民放、公共放送の地元局、ケーブルテレビでの露出が増えて、茶の間でお馴染みの顔になり、通勤する自動車ではラジオの解説コーナーで馴染みの声になった。


 政治的立場を明確にしたのは、知事、国会議員、市長がパネリストの討論会にコーディネーターとして登場した時だ。

 中立的な姿勢を示しながらも、与党衆議院議員の喜多川珠代よりも野党議員を贔屓ひいきするような素振りが聴講者に印象づけられた。

 それ以来、NPO主催の、数十人規模の討論会にもゲストスピーカーとして登場するようになる。


「(珠代)先生、谷川麻紗の後援会ができました」

 私設秘書が朝一番にスケジュール確認している中で、御手洗がさりげなく告げた。

「どう思います?」

「私ならもう少し政局を見ますが、織田井先生なりの読みがあるのでしょう。

 早すぎる旗揚げは本番の選挙戦で息切れするものです。

 織田井先生は百も承知でしょうが」

「だとすれば、(衆議院の)解散は近いと?

 (解散を)否定する声が(党内で)圧倒的なのに」

「織田井マジックのお手並み拝見ですな」


 だが、織田井の打つ手を後追いするように政局が動いていった。

 県内の幾つかの主要団体が発起人に名を連ねている。珠代を見限った団体の反旗だ。

 官僚を理詰めで言い込める論客の珠代であるが、ややもすると地元をないがしろにする。

 反珠代のアイコンに麻紗がすっぽりとはまった。

 地元経済活性化を強く望む経済界を中心に谷川麻紗支持の声が広まった。


 それでも珠代の圧倒的優位は揺るぎない。

 だが、珠代が目指すのは前回以上の得票数での当選だ。これによって、当選二回で副大臣の椅子が与えられると確約を得ている。

 狙うは経済と金融に関わるポストだ。


 美帆のスクープ写真には続きがある。

 マンションから出てくる美帆の写真は、独身女性の異性宅からの朝帰りを臭わせていたが、同性の友人宅から出てきた写真にすぎないとの指摘もあった。

 美帆一人の写真には、友人宅という反論を打破する力がなかった。

 その声の一部は御手洗の工作によるものだ。

 カメラマンは反論の余地のない証拠写真を狙ったのだが、美帆はいつも一人でマンションに入り、一人で出てくるばかりだ。


 では、と、スクープ写真に、禁じ手を使った。

 画像加工、いわゆるコラージュだ。

 カメラマンは美帆を徹底的にマークした。

 美帆の自宅マンションと会社の周辺だ。

 その結果、会社近くのホテルのレストラン、ラ・ドリーで美帆の目撃情報を得た。

 レストランの常連客の証言に寄れば、美帆は男性と一緒に食事するという。

 その男性は今、食事に来ていると。

 ほら、あの席。

 若い女性と一緒に食事しているあの若者(詠人)。


 男の顔が割れたが、彼に取材拒否された。

 だったら徹底的にマークだ。

 ついでに、この女も。

 だが、彼女をマークしたのは痛恨の過ちだった。

 あの佐川良三の婚約者とは。

 背後から迫ってきたボディーガードに、カメラのメモリーカードは壊され、ついでに三発も殴られた。


 この怒りをあの男にぶつける。

 ポルシェに乗るなんて、生意気な奴。

 医学部?学生か?医者か?

 そしてあのマンション。

 ビンゴ!

 加納美帆とこの男はできている!

 だが、二人のツーショットは撮れなかった。

 感心するくらい用心深い。

 身持ちの堅い芸能人以上だ。

 素人のくせに。


 で、二人のツーショットを合成した。

 合成写真!

 愛しの彼氏と夢のツーショット。


 ひょっとして相手はこの方?


 稚拙なタイトルだが、これがウケた。

 実名は出してない。

 男は目隠ししてある。

 今どき、男の家から朝帰りするのは珍しくないのだが、雑誌に載った途端、美帆はすごくふしだらと読者にとられた。

 合成写真という噂は発売当初からネットで指摘されていた。

 マスコミ他社もこの点を突いた。

 三日後に出版社社長が事実を認め謝罪するのだが、美帆の不名誉は取り返しのつかないものとなった。

 後日、謝罪記事が掲載され、相応の慰謝料を受け取るのだが、それでも珠代の選挙へのダメージは小さくなかった。


 美帆とのツーショットが写真誌に掲載された詠人も、マンションの周辺にカメラマンが潜んでいるので、大学に行く以外の外出を控えざるを得なかった。

 美帆とは写真誌の事件がきっかけで疎遠になった。

 その隙間を中埜瞳が埋めた。


 ある日、詠人が待ち望んでいた郵便が届いた。

 早速開封する。


 ご所望の品、見つかりません。


 末尾の署名は直筆で、株式会社前田商事 前田努。

 詠人が依頼した真空管は、旧ソ連製で、極めて特殊な製品だ。

 詠人の真空管式ラジオで使われているのだが、その真空管だけは製品番号などの表記が全くない。

 真空管の寿命は五千時間とされるが、この真空管はもっと早いのか、より長寿命なのか?

 他の真空管はスペアをストックしているのだが、これだけは手に入らない。


 この真空管が特殊な部品と気づいたのは、あの不思議な声を聞いたことがきっかけだ。

 初めは、パソコンなどの家電品が発する電磁波によるノイズと思った。

 だから音声と気付くまで、相当な日数を費やした。

 その間、詠人と拓斗はノイズの原因を探った。

「まだノイズが出るね」

 パソコンやスマートフォン、テレビ、冷蔵庫、およそ電気で動くものの電源を切っても、ノイズは止まなかった。

「無線?やっぱりアマチュア無線、いや違法無線かな?」

 短波放送を初めとする世界中の放送局やアマチュア無線、市民無線までも受信できるBCLラジオで同じ周波数にチューニングしたが、そのノイズは聞こえなかった。


「単に、部品の故障によるノイズかも」

 拓斗はラジオの部品の劣化具合を点検しだした。

 まず大物部品の真空管だ。

 そして、あの真空管を外すと、ノイズは消えた。

「兄貴、ここにスイッチがある!」

 シャシーの裏側、その真空管の傍に小さなスナップスイッチがあった。

 小さなスティックを右に倒すと真空管を外したのと同じ状態になる。

 つまり真空管がオフ。

 最初は左に倒れていたので、真空管がオンの状態にあり、ノイズが出る。

 あの真空管が原因で発するのだ。

 この実験を繰り返して、閃いた。

「拓斗、これって声に聞こえないか?人の声」

「そういわれれば。部品が壊れているんじゃないんだ」

「じゃぁ、やっぱり放送か?」

「日本語に聞こえないか?」

「そういわれれば、そうかな。無線通話かな」

「会話、じゃないよな」

「BCL(外国の放送を聴くこと)でつかまれられない周波数の無線なら、このチューニングダイヤルの周波数じゃないってことだ」

「つまり?」

「チューニングとは違う特定の周波数を受信している。傍受、盗聴!」

「面白い!ラジオにカモフラージュした旧ソ連時代の盗聴器か」

「それにしても、盗聴用の周波数がわからない」


 詠人はネットで部品の画像を探してはラジオの部品と照合し、ラジオ用以外のバリコンを探したが、それらしい部品をラジオから見つけることができなかった。

「バリコンって何?」

「お前でも知らないことがあるんだ。

 昔のラジオで特定の周波数を受信するために使う部品だよ。

 チューニングダイヤルはバリコンと繋がっているんだ。

 やっぱり、ない」

「何が?」

「盗聴用のバリコンも、それっぽいコンデンサもない」

「つまり?」

「この真空管の中に特定の周波数と同期する仕組みが組み込まれているかもしれない。

 すごい発明だ」

 兄弟は驚嘆した。

「僕はマニアじゃないけど、マニア垂涎の真空管だよ。

 オークションで落札されるくらいに。

 それにしても、どの周波数だろう?」

「兄貴らしい。真空管もお宝なんだ」

「ただの骨董品と違う!」

「確かに。

 見かけは真空管だけど、最先端の電子部品より進んだ性能があるみだいだ。

 僕も興味がそそられるよ」


 旧ソ連崩壊による混乱の中で放置された機密文書や研究開発の成果物は取り放題だった。

 詠人の部屋にあるラジオもこの中から見つけ出されたものだ。

 官僚や軍人の横流しに便乗して、前田商事はお宝を買い漁った。

 インペリアル・イースター・エッグの精緻な模写品も、そのような顧客との取り引きで手に入れた一つだ。

 破綻寸前の前田商事を救済するため、キャナリー・ファンドと武田加寿美を引き合わせたのは彼女の知人、富貴麗だ。

 二人は、女性だけの国際奉仕団体の全国大会で知り合って以来の間柄だ。

 麗に武田家の秘めた財力、すなわち長崎眞として発掘したお宝、の情報を提供したのは詠人である。

 詠人にとって前田商事は部品調達の生命線なのだ。

 予備の真空管だけでない。設計図を含めた製造資料も欲しかった。


 オメガでは、あのツーショットで『霊・暴き』と『暴き・緑』の運営者が詠人であると特定した。

 合成写真の男が、シャーマンハンターと目される男と似ているからだ。

 スクープ写真の背景から詠人のマンションを特定した。

 そして写真の男を尾行して大学に入ると、詠人の情報を得た。

 だが、榊詠人は加納美帆と繋がっており、加納美帆はあの実力派議員喜多川珠代と繋がっている。

 下手に手を出したら清流輪教の二の舞になる。


 オメガが決断したのは、詠人のパソコンとサーバーのデータを抹消することだ。

 オメガへの妨害はなくなり、詠人への警告にもなる、一石二鳥の策だ。

 オメガは詠人の部屋に出入りする人物、中埜瞳を探り当てた。

 幸いなことに彼女はアルバイト先でバッグをロッカーに入れるなど、隙だらけで、詠人の部屋の合い鍵を作れそうだ。

 ガードが最も甘いのが、月・木・金に行く喫茶店だ。

 裏口は施錠されているが監視カメラはない。

 オメガの一人がクレーマーを装って瞳や他の店員の注意を引きつける。

 ピッキングの手練れが裏口から入り、ロッカーを開け、瞳のバックを探し、鍵を持ち出した。

 三十分で電子ロック式の鍵を複製する。

 一旦おとなしくなったクレーマー役は、鍵をバッグに戻す頃合いで、また瞳達にいちゃもんをつけた。


 これで榊詠人の部屋に侵入できる。

 榊詠人の外出を確認して部屋に侵入した。

 このドア(書斎)だけ、鍵がかかっている。

 この手の鍵は構造が簡単なので、簡単に開けられる。

 部屋には机が二つ。

 デスクトップ型パソコンと、布がかかった箱、布をどけるとただの箱でなくレトロなラジオ、それぞれの机に置かれている。

 幸い、パソコンには生体認証機能がなく、パスワード入力だけだ。

 キーボード操作や音声入力を録画・録音すればパソコンにアクセスできる。

 天井の三箇所に穴を開けて、パソコンのパスワードを盗み出すための隠しカメラを設置した。

 ここまで十四分。よし引き上げ!


 翌日、また書斎に侵入した。

 オメガのハッカーが録画映像からパスワードを特定した。

 パソコンのログオン成功!

 ウイルスを仕込む。

 並行して、もう一人が設置したカメラを撤収する。

 ここまで五分。よし引き上げ!

 その夜、『霊・暴き』と『暴き・緑』はネットから消滅した。

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