Sweet★love lesson
蘭子side
88
翌年、一月十五日。都内のホテルで私達は盛大な挙式披露宴を執り行う。
私的なことではあるが、桜乃宮財閥会長という立場から身内だけで行うことは出来ず、ひとつの巨大な組織として、桜乃宮財閥関係者やグループ企業の取締役社長、他の財閥関係者、政財界の重鎮や有名人、著名人も招き盛大に行われた。
披露宴では、『松平僚が婚姻により桜乃宮姓となり、桜乃宮銀行の頭取に就任すること』を発表。『百合子が桜乃宮創士との養子離縁届を提出し、新たに柿麿財閥会長、柿麿菊と養子縁組を行い、いずれは柿麿財閥の後継者となること』を発表。『石南花財閥の後継者、石南花大樹さんと向日葵が五月に挙式披露宴を執り行うこと』を報告し、最後に『木村太陽が桜乃宮創士の実子であることを公表し、百合子と正式に婚約すること』を発表した。
披露宴会場は拍手喝采に包まれ、日本巨大グループである桜乃宮財閥と石南花財閥のグループ合併に加え、桜乃宮創一郎と柿麿菊の離婚により関係が拗れていた柿麿財閥と桜乃宮財閥が、百合子の養子縁組により強く結びつくことを暗示し、来賓を含めマスコミを大きく騒がせた。
◇
――アメリカ西海岸――
ハネムーンのため十日間休暇を取った私は、深夜にも拘わらずロスの別荘の一室で、長い髪を束ねパソコンを開きパチパチとキーボードを打つ。
「蘭子、ハネムーンなんだよ。せっかくの休暇なんだ。もっとリラックスしなさい」
「そうはいかないわ。日本を留守にするなんて、心配で心配で……。僚も日本にいないのよ、不手際が起きたらどうするの」
「日本にいてはゆっくりできないから、わざわざハネムーンの地に海外を選んだのに、君は本当に仕事の虫だな」
「なんとでもおっしゃい。私は桜乃宮財閥の会長なの」
「ハニー、わたくしの妻なら妻らしく、耳元で甘い言葉を囁いておくれ」
僚に背後から抱きすくめられ、何度も首筋にキスを落とされ、くすぐったくて体がムズムズと落ち着かない。
「……僚ったら、意地悪ね。重要案件を作成してるの。仕事の邪魔しないで」
僚は赤ワインを口に含み、私にキスをした。口内に広がる甘口のワイン。空腹の胃袋に急速に浸透する。
「ハネムーンの夜よりも大切な重要案件があるのか?」
僚は何度も何度も口移しでワインを含ませる。
「……ずるい。酔っちゃうでしょう。やだ、待って。そこは……だめ」
僚は体のあちこちに、強引にキスを落とす。
「仕事は今しなくていい。主人の言葉が聞けないなら、お仕置きだよ」
この私に、お仕置き……!?
ふざけないで。
「蘭子、甘いワインをたっぷり堪能しなさい」
甘い……ワインがお仕置きなの?
私は自分が酔うとどうなるのか記憶にないけれど、僚は私が酔うとどうなるのか知っているらしい。
挙式披露宴を無事に終え、帰宅後二人でワインを飲み、深酔いした私は僚に何かしたみたいだが、自分が何をしたのか全く覚えてはいないのだ。
でも僚は……
何かにつけて、「あの日の蘭子は情熱的で、可愛い女だった」と語り、「仕事をしている蘭子より、人間味があり好きだよ」と、囁き……。
あれ以来、夜になると私にお酒を勧める。
夫婦で嗜むお酒は、シャンパンでもウィスキーでもビールでも日本酒でも、どれを口にしても美味しいけれど、赤ワインは格別……。
僚に口移しで飲まされ、空っぽになったワインの瓶が数本床にコロコロと転がる。
「………っぁ」
ふわふわして……
気持ちいい……。
いつも途中で寝てしまうから、甘い夜のことは覚えていない。
「蘭子、愛してるよ」
束ねた髪がはらりとほどけ、そこから先の記憶がプツリと途切れる……。
……
…………
……………
「……んふぅ。愛してる……ニャン」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます