蘭子side

86

「……蘭子見てごらん。雪だよ」



 ーークリスマスイブーー


 私はりょうの逞しい腕の中……。


 ベッドの中から、窓の外に視線を移す。


「本当……。今夜はホワイトクリスマスね」


「そうだな。メリークリスマス」


 僚は私の唇に優しくキスを落とした。


「僚、明日は桜乃宮財閥主催のクリスマスパーティーなの。一緒に出席してくれるでしょう?」


「勿論、何処にでも同伴するよ。わたくしは蘭子の執事だから」


「違うわ……」


 私は赤い爪を僚の背中に這わし、自分からキスをする。


「私の執事として同伴するのではなく……私のパートナーとして同伴して欲しいの」


「蘭子……」


「あなたはもうクビよ。私の執事は本日付で解任するわ。今夜からあなたは私だけの……恋人」


「蘭子……。必ず君を幸せにすると、聖夜に誓う」


「幸せにしないと許さないから……」


 僚は私を強く抱きしめ唇を重ねた。何度もキスを交わし愛し合う。


 絡めた舌が、私の心を熱くさせる。


 私はこの人と苦楽を共にし、桜乃宮財閥の会長として生涯を捧げる。


 だがそれは、決して甘くはない棘の道だ……。


 ーーでも……


 二人きりの夜は……


 甘い囁きと甘い指先で、尖った私の心をとろけさせて……。

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