向日葵side

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 亡きお祖父様と、ビューティーマリー化粧品の会長は古き友人。


 その関係もあり、後継者である空社長と私達三姉妹は、親しくさせて頂いている。


 今夜はビューティーマリー化粧品主催のパーティーに招かれ、私は急遽大樹さんと同伴する事になった。正式な婚約はまだだけど、公の場で私達の交際を披露するようなものだ。


 大樹さんは石南花財閥の御曹司らしく紳士的で優しい。でもそれは私だからではなく、私が桜乃宮家の娘だから。


 もしも私が……

 お父様の子供でなかったら……、大樹さんの態度は変わるのかな。


 公営住宅に私が住んでいたら、大樹さんはきっと見向きもしなかっただろう。


 ◇


 夕方、蘭子姉さんと木村さんのお見舞いをし、自宅に戻りドレスに着替える。木村さんの元気な顔を見て、不安が少し解消された。


 木村さんが刺されたと聞いた時、ガクガクと体は震え涙が溢れ不安で夜も眠れなかった。


 鏡に映る私、いつもは使用しない赤いルージュに、赤いマニキュア。ビューティーマリー化粧品の新色だ。


 ーー『木村さん、私には似合わないですよね』


『いや、変じゃないよ。赤も華やかで向日葵さんにとても似合ってる』


 木村さんはそう言ってくれたけど、本当にそう思っているのかな。


 高校生の私がプロの手により変身を遂げる。童話の中の見窄らしいシンデレラが、魔法により美しいお姫様に変身するように、鏡の中の私はまるで別人だ。


「向日葵お嬢様、お仕度が整いました」


「……ありがとうございました。私にはこの口紅少し派手ではありませんか?」


「派手だなんて。とてもお美しいですよ。香水もビューティーマリー化粧品の商品にされますか?」


「……いえ、お父様から頂いた香水にします」


 私はドレッサーから香水を取り出し、首筋と手首に吹きつけた。


 甘く優しい香りが……

 私を包み込む。


 この香水をつけると、気持ちが和らぐ。

 私の精神安定剤。


 淡いピンクのドレスに身を包んだ私。

 胸元には宝石が輝く。


 ーー『向日葵さん、石南花様と正式にお付き合いするの?それで本当に幸せになれるの?』


 私の幸せ……?


 私は……私は……


 ーー鏡に映るあなたは……


 誰……?


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