lesson 6
向日葵side
30
ーー深夜、私はガタガタという小さな物音で目を覚ます。
木村さんがこんな時間に掃除でもしているのかな。
それとも、蘭子姉さんが酔っ払って帰宅したのかな?
ふと、人の気配を感じ、重い瞼を開ける……。
「……ぅぐっ」
いきなり乱暴に口を押さえられ、私は恐怖から身が竦み悲鳴を上げる事が出来なかった。
男の手には黒い革手袋が装着され、左手で私の口を押さえ、右手にはキラリとナイフが光る。そのナイフの刃先は喉元に向いている。
「静かにしろ。騒ぐと殺すぞ」
ドスの効いた低い声、男はニット帽を深く被り、サングラスにマスク。暗い室内で男の顔は見えない。
これが悪夢なのか、現実なのか、恐怖からそれすらも理解出来ず、私はベッドの上で泣くことも叫ぶこともできないまま、ガタガタと震えていた。
「いい子だ。騒がなければ乱暴はしない」
男は慣れた手つきで私の口をガムテープで封じ、両手首と両足首をロープで縛った。
男は私を肩に担ぎ隣室の百合子姉さんの部屋に連れて行く。
薄暗い室内、でも部屋の隅で何かが動いている。目を凝らして見ると、部屋の隅で百合子姉さんが私と同じように縛られ、口をガムテープで封じられ蹲っていた。
荷物のようにドスンと床に下ろされた私。震える私の横で百合子姉さんは、ドンドンと足を鳴らし気丈にも男を睨み付けている。
「お前、殺されたいのか」
男は百合子姉さんの頬にナイフを突き付け脅した。百合子姉さんの足の動きが止まる。
男は百合子姉さんのドレッサーの引き出しや扉を開け、宝石のついたジュエリーや高価な腕時計を奪い、クローゼットからブランドのバッグを取り出し次々と黒い袋に詰めた。
「金はどこにある。この屋敷にはもう一人娘がいるはずだよな。そいつが桜乃宮財閥の会長か?この家の金を管理しているのは、そいつなんだな」
百合子姉さんは首を左右に振り、男の行く手を阻もうとするが、体を拘束されていたためそれは敵わなかった。
男は私達を残し、部屋を出て行く。
百合子姉さんは、後ろ手に縛られたロープを緩めようと、必死に手を動かしていた。でも強く縛られたロープは緩むどころか、細い手首に食い込んでいる。
百合子姉さんの手首は、ロープで擦れ裂傷からは血が滲んでいた。
数分後、蘭子姉さんの部屋から微かに悲鳴が聞こえた。ドタバタと大きな物音がし百合子姉さんと私は顔を見合せた。
蘭子姉さんが無謀にも強盗に抵抗し格闘しているのだ。強盗は鋭いナイフを持っていた。力も強くむやみに抵抗することは危険。
ガチャンとガラスの割れる音がし、男の怒鳴り声と蘭子姉さんの悲鳴が聞こえた。
鼓膜を切り裂くような悲鳴に、全身から血の気が引く。恐怖から体の震えが止まらない。
ーー蘭子姉さん……!
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