03-16
朝、るみなの声で起こされる。涙がにじみそうになった。るみなはこんなにもこの部屋に溢れているのに触れない。パジャマに印刷されているのはあくまでイラストだ。るみな本人じゃない。
こんなに近くにいるのに、こんなに囲まれているのに手が、届かない。結婚的な意味で。
それでも、習慣とは恐ろしいもので、きちんとシャツを脱ぎ、鋼鉄の学生服を装備して鍵を閉めて階下へと向かった。
半ばぼぅっとしながら、朝食を食べ、学校へと向かう。今日は、裕哉のことも忘れて一人だった。
学校へ行く途中、友人に挨拶されたが良く覚えていない。その日の授業も、昼食時の会話も記憶に薄かった。
気付けば放課後。クラスに一人ぽつんと残っていた。夕陽に照らされた教室は、朱い。どれだけの時間一人でいたのだろう。時計を見て、二時間近く一人でいたらしいことがわかっている。
携帯電話がメールの着信を告げる。そして、二つ折りの携帯をぱくんと開くと、メールが四通着ていた。それは、クラスの友達からのもので、いつになったら合流できるのかと聞いてきてるものだ。時間は一番古いもので三十分は過ぎていた。
今から、友達連中に合流して遊ぶ気にもなれない。そして、最新のメールを見れば、それは裕哉からだった。
用件は単純。遊びに来ないかというお誘い。友達とも遊ぶ余裕がないのに裕哉の相手をしている精神的余裕があるものかと、一蹴しようとして思い留まる。
今のこの問題は、嘉寿の問題であるが、それを口にできず抱え込んでいるのもまた問題かもしれない。もしかしたら、裕哉たちなら鉄板のオタクだから、なにかを知っているかもしれない。
そして、なによりも、この問題を言葉にして吐き出したかった。そんな思いに突き動かされ、そうと決めたときには鞄を持って教室を足早に後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます