03-2
翌朝、るみなの声で起きる。いい目覚めだ。すっきりとした気分というのはこのことだろう。だが、昨日はなにかと刺激があって興奮してただけかもしれない。今はすっかり落ち着いて考えることが出来るようになった。
最初に思ったのは、やはり、昨日のようなことを普通の友達にしてしまわないようにすることだ。これは、普通に会話していれば引っかかるところは少ないだろうから、まず心配は要らないだろう。
だが、昨日の自分は夢のように感じられた。ぺらぺらとオタク話に花を咲かせている自分を昨日の朝にでも想像できただろうか。
今までとの自分像とのギャップに驚きを隠せないが、やはり自分だった。気の迷い、出来心と言い訳したいがでも、今でもるみなの話しをしたいという感情はくすぶっているのは誤魔化せない。
むしろ、そんな感情を持っている自分に一種の嫌悪すら感じる。
でも、自分は自分から逃げられなくて、混じりたくないが自分の本質はオタクなのだろう。姉の姿を見ていれば素養は十分あるように思えて仕方ない。姉は、今はやりの歴女というやつで、彼女もまた一人のキャラクターを愛していた。姉は、伊達政宗を追い求めているのだ。
だが、嘉寿と違うのは、いろんなカップリングや、様々なメディアで展開するものも追いかけていた。ゲームは、ギャグ要素満載のゲームから、割と真面目なシミュレーションゲームもやっていた。それにともなうキャラクター商品から、一般人ご用達の歴史ショップにいって、真面目な政宗の本なんかも読んでいた。
だから、戦国時代の東北にやたら詳しい。そして趣味が高じて、いまでは仙台の大学に歴史を学びにいっている。
その光景を、中学生の嘉寿は気持ち悪いなどと思っていたが、今の自分となにが違うというのだろう。完全二次元、しかも半端に器用なせいでいろんなグッズを手作りしてしまう、それらを考えると姉より充分気持ち悪いと、中学の頃の自分が見たら言うだろう。
姉は、まだ、歴史上の人物に凝っていたから、家でもあまり問題視されていなかったが、自分は違う。この部屋を見られたら終わる。人生も社会的な地位も。
今日も、また装う日が始まる。昨日まではあんなにも気楽に隠せていたのに。つまりは、この部屋さえ見られなければ問題なかったのだ。しかし、今日からは自分が話してしまうかもしれないという爆弾を抱えてしまった。
「嘉寿くーん。起きてる? 遅刻するわよー」
そんなことを考えていると、下から母親の声が聞こえてきた。この後どうなるか、それは見てみないことにはなんとも言えない。そう腹をくくって学校へ行く準備をあわてて始めた。
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