02-9

 次の日、少し曇り空で冴えない空だった。まるで、るみなについての愛を語られている自分のような空だと思った。

 裕哉が迎えにきてまた一緒に肩を並べている。

「マンガ、サンキュー」

「お、読んでくれはったん? どうやった?」

「どうやったって、おもしろいのもあったし、くだらないやつも多かった」

「そうや、それがアンソロジーの醍醐味やねん!」

 嬉々として答える裕哉。

「全体的には、ないな」

「ええねん、それで。自分と呼吸の合う作者さんを見つけるか、気にいった作品を大事にすればいいねん」

「それに、八百円も出すのはしんどいな」

「まあ、それはしかたないわ。町内会費みたいなもんや」

 なかなか上手い例えだと思った。

「もっと、否定的に言われるん思っとたわ」

「おもしろいものはおもしろいでいいじゃんって、おまえが言ってたんだろう」

「そっかそっか」

 非常に嬉しそうな笑顔を見せる。目が細くて狐のようだ。

「ところで、今日の放課後あいてる?」

 いきなりの言葉に、嘉寿は今日の親のシフトを思い出す。今日は早めに帰ってくる。だから、たまっているパジャマの洗濯はできない。

「ああ、少しなら空いてるけど」

「じゃあ、放課後わいのうち来ぃへん?」

「いいけど、なにたくらんでる?」

「なんもたくらんでへんよ。ちょっと会わせたい人間がおるだけや」

「……わかった。行く」

 それを皮切りに、また二人の距離は空いて、それぞれの友達と合流して自分たちの世界を作っていく。

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