第4話「久賀先輩と先輩のトモダチ」



毎週木曜日、三限で授業が終わる私。


今週のこの日はバイトも休みをもらい、四限で授業が終わるという久賀先輩のことを待っていた。


放課後、約束していた駅前のジェラート屋さんに行くためだ。



ふと、暇つぶしに弄っていた携帯の画面から顔を上げると、少し離れたところに先輩らしき姿を見つける。


腰を掛けていたベンチから立ち上がり、声を掛けようと手を挙げた時だった。



「久賀君!」


私よりほんの一秒先に彼の名前を呼んだ女性。

小走りで駆け寄ってくる彼女に笑顔で答える久賀先輩。


名前は分からないが、すごく見覚えがあった。


スタイルが良く、綺麗に染められた長い髪は胸元から毛先に掛けて丁寧に巻かれていて…



(そうだあの人…先輩と同じゼミの人だ)



髪も服も化粧も手抜きな私とは、まるで別世界の存在にさえ感じる。



そのまま声を掛けることもなくぼーっと先輩の方を眺めていると、後を追うようにして、他に二人の女性と二人の男性が先輩と女性の元へ近寄って行く。


そうしてあっという間に人に囲まれた先輩を、人付き合いの苦手な私は素直にすごいなと思う一方で、たった一歳の差であの輪の中に入っていけない現実に少し悲しくなった。



先輩との待ち合わせは16時半。


時計の針はあと五分で約束の時刻を指そうとしている。



(そういえばゼミ発表がもうすぐだって言ってたっけ)



鞄からプリントやファイルを取り出し、やりとりする先輩たちの姿を見て、それじゃあしょうがないよねと、小さく呟きながら再びベンチに腰を下ろした。



夕方の柔らかな日差しと心地良い風に、徐々に景色がぼやけ始める。




(私と先輩ってどうやって知り合ったんだっけ…)



そんなことを考えながらゆっくりと目を閉じた。




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